遅刻をしたときの減給方法・欠勤控除|就業規則の規定例

遅刻をしたときの減給方法・欠勤控除

  • 従業員が遅刻を3回したときは、欠勤したとみなして、1日分の賃金を減額することを就業規則に記載しようと思っています。問題がありますか?
  • そのような取扱いは賃金の不払いとして、労働基準法に違反しますので、就業規則に記載することはできません。

遅刻をしたときの減給方法・欠勤控除

例えば、1日の所定労働時間が8時間の会社で、1時間の遅刻を3回したとします。このときに、3時間分の賃金を減額することは可能です。しかし、欠勤したものとして、8時間分の賃金を減額(欠勤控除)することはできません。

労働基準法(第24条)によって、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と規定されています。

この規定に照らし合わせると、5時間分の賃金の不払いとして、労働基準法違反になってしまいます。賃金は労働時間に対して支払わないといけません。遅刻した時間分の賃金を減額することは可能ですが、それを超えて減額することはできません。

遅刻3回で欠勤扱いとすることについて、従業員が個別に同意したり、就業規則に規定しても認められません。労働基準法は、労働条件に関する最低基準を定めた法律ですので、その最低基準を下回る個別の同意や就業規則の規定は無効になります。

また、遅刻を3回したときに、欠勤控除をしないで、年次有給休暇を1日消化する取扱いも違法です。実際に年次有給休暇を取得していないにもかかわらず、その権利を不当に剥奪することになります。

ただし、皆勤手当を支払っている会社で、就業規則(賃金規程)に基づいて、遅刻をした従業員の皆勤手当を減額することは可能です。労働基準法上、問題はありません。

皆勤手当は一般的に、無遅刻・無欠勤を条件として支給するものです。皆勤手当は、賃金を減額するというより、条件をクリアした従業員に対して、褒美として加算して支給する手当と考えれば理解しやすいと思います。

そのような性質から、最低賃金の計算においては、皆勤手当は除外して計算することになっています。割増賃金、通勤手当、家族手当と同様の位置付けです。

また、遅刻を人事考課の対象として、賞与の支給額や昇給額に反映することも可能です。賞与の支給額や昇給額については、具体的に約束をしていなければ、会社の判断で自由に決定できます。

なお、遅刻を繰り返す従業員については、賃金を減額するより、まずは、会社(上司)から丁寧に指導・教育をするべきです。

それでも改善しない場合は、懲戒処分が考えられます。最初は警告をして、繰り返したときは譴責や戒告(始末書の提出)、それでも改善しない場合は減給の制裁を行うこともあります。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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