就業規則に定めていない手当の支給|就業規則の規定例
就業規則に定めていない手当の支給
- 事情があって、1人の従業員に特別手当を支給しようと考えています。就業規則(賃金規程)に、特別手当の記載をしないといけませんか?
- 制度として、特別手当の支給対象者や支給額の決定方法が決まっている場合は、就業規則(賃金規程)に記載する必要がありますが、特別にその従業員に限って支給するものであれば、記載しなくても構いません。
就業規則に定めていない手当の支給
労働基準法(第89条)によって、就業規則に記載しなければならない、賃金に関する事項として、次の事項が挙げられています。
- 賃金の決定方法又は計算方法
- 賃金の支払方法
- 賃金の締切日及び支払日
- 昇給
賃金に関する事項については、就業規則(本則)とは別に、賃金規程を作成している会社が多いです。2.3.4.については、実際の取扱いに合わせて、賃金規程に記載します。
「1.決定方法又は計算方法」については、基本給及び手当ごとに記載します。
通勤手当や家族手当を支払っている会社では、通勤距離や扶養家族の数を基準にして、一定の決定方法や計算方法を定めて、支給額を算出していると思います。
また、客観的な基準がなくて、従業員ごとに会社が支給額を決定している手当もあります。そのような手当については、決定方法又は計算方法は、抽象的な書き方でも構いません。
その手当を支給する目的を明らかにすれば、支給対象者の条件や考慮・評価する要素について、賃金規程(就業規則)に記載できると思います。
しかし、特別にその従業員に限って支給する手当については、賃金規程(就業規則)に記載する必要はありません。就業規則は統一的・画一的な労働条件を定めたものですので、例外的に個別に約束した事項については馴染みません。
例えば、他社からスカウトした人材で、引き抜きを実現するために有利な条件を設定するケースがあります。
もし、就業規則(賃金規程)に、その特別手当の記載をすると、「この特別手当は何だ?」「私には特別手当は支給されないのか?」と、他の従業員から不信感を持たれる恐れがあります。
したがって、制度として支給が決まっているものではなくて、その1人の従業員にだけ支給する特別手当については、就業規則には記載しないで、個別に交付する雇用契約書に基づいて支給する方法が適切と思います。
就業規則を下回る取扱いは許されませんが、就業規則を上回る取扱いは可能です。就業規則に記載していない手当を支給することは、従業員にとっては有利な取扱いですので、問題はありません。
就業規則に記載していない手当を支給してはいけない(支給する手当は就業規則に記載しないといけない)というような決まりはありません。
なお、就業規則に記載しないとしても、割増賃金の計算の基礎に含める等、賃金として定められている労働基準法上のルールは遵守する必要があります。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。
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