昇給をしない規定|就業規則の規定例
昇給をしない規定
- 就業規則に、「55歳以降は昇給しない」という規定を追加しようと思っています。いかがでしょうか?
- 従業員のモチベーションが低下する恐れがありますので、そのような規定は設けない方が良いと思います。
昇給をしない規定
一定の年齢以降は、昇給をしない(昇給を停止する)という会社があります。
降給をする場合は、原則的には本人から同意を得る必要がありますが、昇給をする場合は、原則的には会社の判断で自由に行えます。昇給する額についても、通常は会社が人事考課を行って、各人ごとに決定しています。
仮に、55歳以降は昇給しないとしても、就業規則に、「55歳以降は昇給しない」というような規定を設ける必要はありません。そのような規定がなくても、昇給を約束していない限り、昇給額を0円とすることは可能です。
就業規則に「55歳以降は昇給しない」と記載すると、それが労使間の契約内容になります。例外なく昇給しないのであれば、就業規則に記載しても良いと思います。そのように記載していれば、昇給の取扱いについて、従業員に説明しやすいと思います。
しかし、賃金の額は、成果や貢献度等に応じて、個人ごとに決定するものです。前年度の成果や貢献度等を上回った従業員については、相応の昇給をするべきで、「55歳以上だから昇給しない」という理屈は本人にとっては納得できません。
従業員がいくら頑張っても評価されないと理解すれば、モチベーションが低下して、頑張らない方向に向かいます。翌年度以降の成果や貢献度は低下しますので、会社にとっても本人にとってもデメリットの方が大きいと思います。
大企業で代わりとなる候補者が他にいれば、若返りを図って担当業務を代えられるかもしれませんが、中小零細企業では難しいと思います。
就業規則に、「55歳以降は昇給しない」というような規定がなくても、昇給額を0円とすることは可能です。昇給があり得る場合は、会社を制限することになりますので、そのような規定は設けない方が良いと思います。
なお、就業規則の内容より、従業員にとって有利な取扱いをすることは可能です。就業規則に、「55歳以降は昇給しない」という規定を設けておいて、昇給をすることは従業員にとって有利な取扱いですので、昇給することは可能です。
しかし、そのような例外を想定している場合は、最初からそのような規定は設けない方が良いと思います。例外があると知らずに、55歳以降のモチベーションが低下する者がいるかもしれません。
質問と類似のケースで、「定年後に再雇用するときは、賃金を8割に減額する」というような規定を設けている就業規則を見掛けることがあります。
この規定も、本来は、会社が自由に決定できるにもかかわらず、会社の自由裁量の範囲を無駄に制限することになります。
60歳で定年退職して再雇用する者については、改めて労働条件を設定し直しますが、その都度の状況に応じて、業務内容を維持したり、軽減したり、個別に決められます。
賃金を8割に減額することが相応な従業員がいると思いますが、7割が相応、9割が相応、現状維持が相応な従業員もいると思います。個々の従業員によって相応しい賃金額は異なるはずで、そのときに、一律に8割に減額するというような規定があると、不都合が生じます。
以上のとおり、就業規則には会社を制限するような規定は設けない方が良いと思います。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。
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