一部の従業員に支給する手当|就業規則の規定例

一部の従業員に支給する手当

  • 一部の従業員に限定して支給している手当がありますが、就業規則(賃金規程)に記載すると、他の者から支給するよう求められないでしょうか?
  • 就業規則(賃金規程)の規定の仕方によります。実際の取扱いに合った記載内容にすることが重要です。

一部の従業員に支給する手当

賃金規程(就業規則)に、例えば、次のように、支給対象者を具体的に定めている場合は、該当する従業員から支給するよう求められます。

通常はこのように、支給対象者や条件を具体的に定めて、支給している会社が多いです。

支給対象者や条件を具体的に定めていないと、従業員に不公平ではないかと不満を持たれる恐れがありますので、全ての手当について、具体的に定めることが望ましいです。

また、支給額の決定方法を明示することによって、従業員は何を頑張れば賃金アップが見込めるのか分かりますので、モチベーションの向上に繋がります。

会社によっては、職務手当や皆勤手当など、名称は問いませんが、支給対象者や条件を具体的に定めないで、同じ正社員でも、支給したり、支給しなかったりする場合があります。

そして、会社は「Aさんには職務手当を支給しない」と考えている場合に、反対に、Aさんは「職務手当が支給される」と思い込んで、双方に思い違いが生じるとトラブルに発展する可能性があります。

トラブルを防止するためには、本人に「支給される」と思い込ませないことが重要です。そのため、次のような方法が考えられます。

まずは、採用時の雇用契約書に、支給する手当とそれぞれの金額及び賃金の総額を記載して、本人に交付します。

また、年度が変わったり、手当の支給額を変更したときに、従業員に支給する手当とそれぞれの金額及び賃金の総額を記載した賃金通知書を交付します。

雇用契約書は採用時に交付することが、労働基準法によって義務付けられています。採用した後に労働条件を変更した場合は、改めて交付することは義務付けられていませんが、賃金は重要な労働条件ですので、思い違いが生じないように賃金通知書を交付することが望ましいです。

なお、割増賃金(残業手当)を定額で支給している会社は、賃金通知書(同意書)を交付して、その取扱いについて、本人から同意を得る必要があります。

更に、賃金規程(就業規則)には、賃金(手当)の構成や一覧を記載している部分があると思います。そこに、「各手当の支給の有無は、個別に定めた雇用契約書又は賃金通知書による」という規定を設けておけば、不支給の手当については、自分は対象外であると認識できます。

その上で、支給対象者や条件を具体的に定められない手当については、賃金規程(就業規則)の手当の規定に、「雇用契約書又は賃金通知書で支給することを定めた従業員に対して、」といった記載を追加すれば、万全です。

雇用契約書、賃金通知書、賃金規程(就業規則)の3段階で備えていれば、支給を求められることはないと思います。

なお、支給を求められないとしても、その手当を支給する目的や支給に必要な条件等について、従業員に丁寧に説明をすることが重要です。「全て会社の裁量です」と言い切ってしまうと、モチベーションが低下する恐れがあります。

また、特別な事情があって、個別に決定して、1人の従業員にだけ支給しているような手当については、賃金規程(就業規則)に記載する必要はありません。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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