遅刻、早退等の時間の端数処理|就業規則の規定例
遅刻、早退等の時間の端数処理
- 従業員が30分未満の遅刻をしたときは、計算を簡略化するために、30分に切り上げて賃金を控除しています。そのように就業規則(賃金規程)に記載してもらえますでしょうか?
- そのような取扱いは、労働基準法で定められている「賃金の全額払の原則」に違反する行為ですので、就業規則(賃金規程)に記載することはできません。遅刻や早退をした時間は切り上げないで、1分単位で処理(控除)するようにしてください。
賃金の全額払の原則
例えば、従業員が5分の遅刻をしたときに、5分に相当する賃金を控除することは、もちろん可能です。ノーワークノーペイの原則により、勤務をしなかった時間に対して、会社は賃金を支払う必要はありません。
しかし、計算が面倒という理由から、5分の遅刻をしたときに、30分の遅刻をしたものとして、賃金を控除している会社があります。このとき、切り上げた25分については、実際に勤務をしているにもかかわらず、賃金を支払っていない、つまり、会社は無給で働かせていることになります。
労働基準法(第24条)には、賃金の全額を支払わなければならないという「賃金の全額払の原則」が定められていて、これに違反する行為です。
就業規則の記載
就業規則には、労働基準法に違反する内容を記載することができません。もし、違反する内容を記載したとしても、労働基準法が優先されますので、就業規則のその部分は無効になります。
また、就業規則を労働基準監督署に届け出たときは、監督官のチェックが入ります。労働基準法に違反する部分が見付かったときは、修正するよう指導されます。万一、見付からなかったとしても、無効であることは同じです。
遅刻した時間の端数を切り上げて、賃金を控除することは許されません。遅刻や早退等があったときは、1分単位で計算してください。パソコンがない時代からこのように決められています。その時代と比べれば、1分単位の計算は簡単にできるはずです。
遅刻に対する指導、注意
計算の煩わしさに加えて、遅刻に対する指導や注意、ペナルティを与える意味を込めて、切り上げて減額しているケースもあります。
遅刻や早退、欠勤が繰り返されると、業務に支障が生じたり、職場の規律が乱れたりしますので、会社は指導や注意を行うべきです。しかし、それは、給与計算(賃金の控除)とは別に、切り離して考えてください。
就業規則の懲戒の規程は、どのように定められていますでしょうか?
理由のない遅刻、早退、欠勤をした場合に、始末書を提出させられるよう規定されていれば、その就業規則に基づいて、会社は始末書を提出させることができます。
また、理由のない遅刻、早退、欠勤を繰り返した場合に、減給の制裁ができるよう規定されていれば、その就業規則に基づいて、会社は減給を行うことができます。これは懲戒処分として行うものですので、賃金の全額払いの原則には抵触しません。なお、減給の制裁で減額できる上限は、1回の違反行為につき、平均賃金の半額までとされています。
就業規則を作成していなかったり、懲戒処分の事由として定めていない場合は、見直すようお勧めいたします。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。
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