前年度分と今年度分の年次有給休暇|就業規則の規定例
前年度分と今年度分の年次有給休暇
- 前年度に付与した年次有給休暇と今年度に付与した年次有給休暇は、どちらから消化するのでしょうか?
- 労働基準法では決められていませんので、就業規則の規定によります。
前年度分と今年度分の年次有給休暇
就業規則を確認してください。労働基準法(第115条)によって、年次有給休暇の時効は2年間と定められていますので、「未消化の年次有給休暇は翌年度に限って繰り越す」といった規定があると思います。
したがって、次の2つの年次有給休暇が併存することになります。
- 今年度に付与した年次有給休暇
- 前年度に付与して繰り越した年次有給休暇
年次有給休暇の取得率が低い会社は、意識したことがないかもしれませんが、従業員が年次有給休暇を取得したときに、どちらの年次有給休暇から消化するのかによって、年次有給休暇の残日数が異なります。
年次有給休暇の付与日数は、労働基準法によって、次のように定められています。
勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
例えば、勤続3.5年(付与日数14日)の従業員が、1年の間に8日の年次有給休暇を取得したとします。
このときに、前年度分の年次有給休暇から消化すると、前年度から繰り越した年次有給休暇が8日以上残っている場合は、今年度に付与した14日の年次有給休暇は消化されません。したがって、翌年度には、丸々14日が繰り越されます。
一方、今年度分の年次有給休暇から消化すると、翌年度に繰り越されるのは、14日から差し引いた6日(14日−8日)になります。
したがって、この例で言うと、次のように、翌年度に繰り越す日数が異なります。
- 前年度分の年次有給休暇から消化すると、翌年度に繰り越されるのは14日
- 今年度分の年次有給休暇から消化すると、翌年度に繰り越されるのは6日
そして、次の年は勤続4.5年で、16日の年次有給休暇を付与しますので、1年の間に取得できる年次有給休暇の合計日数に差が生じます。
したがって、会社にとっては、今年度分の年次有給休暇から消化した方が、年次有給休暇の残日数を減らせます。
前年度分と今年度分のどちらの年次有給休暇から消化するのか、労働基準法では定められていませんので、就業規則に今年度分から消化することを定めていれば、就業規則の内容が優先されます。当然ですが、違法な取扱いではありません。
しかし、これまで前年度分の年次有給休暇から消化していた場合に、今年度分の年次有給休暇から消化するよう取扱いを変更する場合は、就業規則の不利益変更に該当しますので、従業員と話し合って同意を得るようにしてください。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。
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