当日の年次有給休暇の申請|就業規則の規定例

当日の年次有給休暇の申請

  • 当日になって、従業員が「年次有給休暇を取得したい」と言ってきたときは、会社は取得を認めないといけないのでしょうか?
  • 法律的には、当日に申し出た年次有給休暇については、会社は認めなくても構いません。欠勤扱いにすることも可能です。

当日の年次有給休暇の申請

従業員が年次有給休暇を請求して、その時季に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営を妨げることになる場合は、会社は従業員が指定した日を変更することが認められています。これを「時季変更権の行使」と言って、労働基準法で定められています。

就業規則でも、「事業の正常な運営に支障があるときは、会社は従業員が指定した日を変更することがある」といった規定を設けていると思います。

そして、例えば、従業員が「3日前の休んだ日を、年次有給休暇を取得したことにして欲しい」と言ってきたとすると、過去のことですので、会社は時季変更権を行使することができません。

このような申出を認めなければならないとすると、労働基準法で認められた時季変更権が意味のないものになってしまいます。そのため、年次有給休暇の申出は、事前に行うことと考えられています。

就業規則を確認してください。年次有給休暇の申出は、いつまでに行わないといけないか規定していますか?事前に行うことが規定されていますか?

次に、従業員が「今日休みますので、年次有給休暇を取得したい」と言ってきたケースを考えてみましょう。

当日になって急に言われても、会社には時季変更権を行使するかどうか、具体的には、代替要員を確保できるかどうかといったことを検討するための時間的な余裕がありません。

また、原則的に、年次有給休暇は“日”を単位にして取得するのですが、労働基準法においては、午前0時から午後12時までを1日の単位として考えます。そのため、当日の申請は、始業時刻前であっても、その日の一部は既に経過していることになります。つまり、当日の申請は事後の申請ということになります。

以上により、当日の申請は事後の申請として、会社は年次有給休暇の取得の申出を拒否できます。取得を認めないで、欠勤扱いにしても問題はありません。

なお、年次有給休暇の申請において、事前というのは、一般的には前日の終業時刻までと考えられています。

もし、就業規則で、3日前や1週間前までに申し出るよう規定されていたとしても、事業の正常な運営を妨げることにならなければ、前日の申出であっても認めないといけません。法律が優先されますので、就業規則のそのような規定は強制力がありません。

当日の年次有給休暇を認めることも可能

急病等により、当日の申請でも、年次有給休暇の取得を認めている会社は多いと思います。

当日の申請については、法律上は、会社は拒否できますので、認めるかどうかは会社が自由に決められます。しかし、無条件に認めていると、職場がルーズになってしまいますので、一定の条件を設定すると良いでしょう。

例えば、急病等の場合にだけ認めることにして、場合によっては、医師の診断書、医療機関のレシートや領収証の提出を求めることがあるといった規定を就業規則に設けておけば、虚偽の利用を防止できるようになります。

なお、前日までに行われた年次有給休暇の申請については、労働基準法で認められた権利ですので、会社が取得理由を制限したり、条件を設定したりすることはできません。もちろん、就業規則で定めることもできません。

年次有給休暇について