当日の年次有給休暇の申請|就業規則の規定例

当日の年次有給休暇の申請

  • 始業時刻の前後に、従業員から会社に連絡があって、「体調不良のため、今日は年次有給休暇を取得したい」と言ってきたときは、会社は取得を認めないといけませんか?
  • 労働基準法上は、当日の年次有給休暇の請求は認めなくても構いません。会社の判断で、欠勤扱いにできます。

当日の年次有給休暇の申請

労働基準法(第39条第5項)によって、次のように規定されています。

原則的には、会社は、従業員が請求した日に年次有給休暇を与えることが義務付けられています。

ただし、例外的に、従業員が請求した日に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営を妨げる場合は、会社は年次有給休暇の取得日を変更することが認められています。この権利のことを「時季変更権」と言います。

それで、例えば、従業員が、「3日前に休んだけれども、その日は年次有給休暇を取得したことにして欲しい」と言ってきたとします。仮に、それによって事業の正常な運営を妨げたとしても、過去のことですので、会社は時季変更権を行使できません。

このような申出を認めなければならないとすると、労働基準法で認められた時季変更権が無意味なものになってしまいます。そのため、年次有給休暇の申請は事前に行うことが条件になっています。

会社の就業規則を確認してください。手続き上のルールとして、年次有給休暇は、事前に申し出ることを定めていますか?

次に、従業員が、「体調不良のため、今日は年次有給休暇を取得したい」と言ってきた場合を考えてみましょう。

当日の始業時刻前に年次有給休暇を申請した場合、会社は時季変更権を行使するかどうか、具体的には、代替要員を確保できるかどうか、その他の事情を検討するための時間を確保することが困難です。

また、原則的に、年次有給休暇は“日”を単位として取得しますが、労働基準法においては、午前0時から午後12時までを1日の単位としています。そのため、当日の申請は、始業時刻前であっても、その日の一部は経過していますので、当日の申請は事後(過去)の申請ということになります。

したがって、当日の年次有給休暇の申請については、会社は拒否できます。取得を認めないで、欠勤扱いにしても問題はありません。

年次有給休暇の申請は前日までに行うことが条件になりますが、代替要員の確保・調整をするために、一般的には前日の終業時刻までと考えられています。

3日前や1週間前に申し出ることを就業規則で義務付けているとしても、事業の正常な運営を妨げなければ、前日の申出であっても認めないといけません。法律が優先されますので、就業規則のそのような規定は強制力がありません。

また、当日の申請でも、体調不良の場合に限って、年次有給休暇の取得を認めている会社は多いと思います。

従業員が当日に年次有給休暇を申し出たときは、労働基準法上は、会社は拒否をして欠勤扱いにできますので、申出を認めるかどうかは会社の判断によります。しかし、無条件に認めていると、職場がルーズになる恐れがありますので、一定の条件を設定するべきです。

例えば、急病等の場合に限って認めることにして、場合によっては、会社の判断で、医療機関のレシートや領収証、医師の診断書の提出を求めることがあるといった規定を就業規則に設けておけば、虚偽の利用を防止できます。

なお、前日までに年次有給休暇を申請した場合は、労働基準法で認められた権利ですので、会社が取得理由を制限したり、医師の診断書の提出を求めたり、条件を設定することはできません。もちろん、就業規則で定めることもできません。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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