年次有給休暇の時季変更権|就業規則の規定例
年次有給休暇の時季変更権
- 就業規則に、社員が指定した年次有給休暇の取得日を変更することがあると記載されているのですが、どのような場合に変更できるのでしょうか?
- その日に年次有給休暇を取得されると、事業の正常な運営を妨げる場合です。
年次有給休暇の付与日数
労働基準法により、それぞれの社員の勤続年数に応じて、会社は次の日数の年次有給休暇を与えないといけません。ただし、前年度の出勤率が8割以上であることが条件になっています。
勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
就業規則でも、このように定められていると思います。
この付与日数は、入社日を基準日として、それぞれの勤続年数に達した日に付与することになっています。年次有給休暇の時効は2年ですので、最大で40日になります。
また、会社によっては、社員全員に共通する基準日を設定して、例えば、毎年4月1日に全員に付与すると規定している就業規則もあります。
ただし、この場合は、就業規則の内容が労働基準法の内容より、社員にとって有利に定めていないといけません。つまり、上の表の勤続年数より、前倒しして与える必要があります。
年次有給休暇の時季変更権
社員から年次有給休暇の申し出があったときは、原則として、社員が指定した日に与えないといけません。会社の承認を要することを義務付けている就業規則がありますが、年次有給休暇の取得を承認制にすることはできません。
ただし、労働基準法では、社員が指定した日に年次有給休暇を取得されると、「事業の正常な運営を妨げる場合」は、社員が指定した日を変更することが認められています。
ご質問の就業規則の内容になりますが、この年次有給休暇の取得日を変更する権利のことを「時季変更権」と言います。
時季変更権を行使できるケース
「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかどうかは、会社の規模や業種、その社員が担当している業務内容、業務の繁閑、年次有給休暇の予定日数、代替要員の確保の難易、等の事情を総合的に考慮して判断されることになっています。
具体的には、
- その日に、多くの社員が休むことになったり(風邪の流行や他の社員の休暇など)
- その日に、その社員しかできない重要な業務を予定していたり
- その日に、出張や研修などの特別な業務を予定していたり
する場合で、代わりの社員を補充できなくて、「事業の正常な運営を妨げる場合」が考えられます
ただし、人手不足で日常的に忙しいような場合は認められません。これが認められると、いつになっても年次有給休暇を取得できないことになります。
なお、事業の正常な運営を妨げるほどではないときに、社員に、「その日は忙しいから他の日に変えてくれないだろうか」とお願いをすることは可能です。ただし、これに応じるかどうかは社員の自由で、強制してはいけません。
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