年次有給休暇の賃金|就業規則の規定例
年次有給休暇の賃金
- 時間給のアルバイトも年次有給休暇を取れるようですが、アルバイトが年次有給休暇を取得した場合、賃金はどのようにすれば良いのでしょうか?
- 年次有給休暇を取得した日は所定労働時間勤務をしたものとみなして、通常の賃金を支払っている会社が多いと思います。他の方法もありますが、どの方法で支払うのか、就業規則に記載をする必要があります。
月給の場合と時間給の場合
「年次有給休暇」を取得した日については、文字どおり、会社は有給で処理をしないといけません。
月給制の年次有給休暇の賃金
しかし、月給制の正社員が年次有給休暇を取得したときは、特に何も処理はしていないという会社が多いのではないでしょうか。
例えば、出勤日数が毎月22日で、賃金が月額22万円とすると、1日当たり1万円になります。この場合に、年次有給休暇を1日取得したとすると、欠勤控除により1万円を減額して、有給休暇として1万円を支給して、プラスマイナスゼロになります。
月給制の場合は、通常の勤務をしたものとして、特に何もしない(欠勤控除をしない)という取扱いが、結果的に有給で処理をしていることになります。
時間給制の年次有給休暇の賃金
しかし、時間給制の場合は違います。例えば、丸1ヶ月年次有給休暇を取得した場合で考えると分かりやすいかもしれません。
月給制の場合は何も処理をしない(欠勤控除をしない)ので、会社は22万円を支給することになります。一方、時間給制の場合は何も処理をしなければ、賃金は0円で無給になってしまいます。これでは有給の扱いになっていません。
時間給制のアルバイトやパートタイマーが年次有給休暇を取得したときは、賃金を追加して支払わないといけません。
労働基準法で定められている方法
では、年次有給休暇を取得した日については、いくら支払えば良いのでしょうか。労働基準法では、次の3つの方法が定められています。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 健康保険法で定められた標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1に相当する金額)
ただし、3.の金額で支払う場合は、予め従業員の過半数代表者(又は過半数労働組合)と労使協定を締結する必要があります。
また、いずれの方法により支払うのかは、会社が自由に決められますが、就業規則で定めないといけません。あるときは1.の金額、あるときは2.の金額、と好き勝手に変えることはできません。
就業規則で、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」と定めた場合は、その方法で支払ってください。
なお、正社員就業規則では、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を支払うことにして、パートタイマー就業規則やアルバイト就業規則では、「平均賃金」を支払うことにしても構いません。
日によって所定労働時間が異なる場合
最初に説明をしました、月給制の正社員が年次有給休暇を取得したときに、何も処理をしないという取扱いは、2.の「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を支払っていることになります。
一方、時間給制のアルバイトが年次有給休暇を取得したときに、同じ2.の方法で支払うとすると、例えば、所定労働時間が4時間の日は4時間分、所定労働時間が8時間の日は8時間分の賃金を支払うことになります。時間給が1,000円とすると、それぞれ1日につき、4,000円と8,000円の違いが生じます。
所定労働時間が毎日同じ場合は問題にはならないのですが、日によって所定労働時間に長短がある場合は、所定労働時間が長い日に年次有給休暇の取得が集中し、会社の負担が大きくなってしまいます。
そこで、1.の平均賃金で支払う方法にすれば、所定労働時間の長短に関係なく、一定の金額を支払うことになります。しかし、そうすると、所定労働時間が短い日に年次有給休暇の取得が集中します。
日によって所定労働時間が異なる場合は、会社はある程度の負担は避けられません。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。
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