法律に違反している会社の就業規則

法律に違反している会社の就業規則

  • 当社の現在の取扱いは法律に違反していると思いますが、就業規則は作成しない方が良いでしょうか?
  • 理想論かもしれませんが、就業規則を作成して、法律を守るよう取扱いを適正にすることがベストな方法と思います。

就業規則を作成して適法化する

会社を創業した当初から同じ従業員で将来も現状維持を続けていく場合は、家族的な信頼関係に基づいて法律違反は問題にはならないかもしれません。

就業規則は労働基準法等の法律に適合した内容で作成しないといけませんので、従業員数が10人未満の場合は、就業規則は作成しない方が良いと思います。

しかし、従業員数が10人以上の会社は、労働基準法によって、就業規則の作成が義務付けられます。そして、労働基準法に違反する内容で就業規則を作成して、労働基準監督署に提出すると、労働基準監督署から修正するよう指導される可能性があります。

また、10人未満のままであっても、新しい従業員を採用して、会社の法律違反に納得できなければ、問題が表面化する恐れがあります。そうなると、労働基準監督署から是正勧告を受ける等して、法律を守るように強制的に是正させられます。

従業員が増えると、法律違反が表面化するリスクが高まりますので、どこかの段階で発覚することは避けられません。更に、従業員数が増えると、会社に与える影響(是正に要する費用)も大きくなります。

したがって、従業員が少ない間に(できれば就業規則の作成義務が生じる10人未満の間に)、法律に適合した取扱いに修正するのが賢明と思います。

また、法律違反が表面化して労働基準監督署から是正勧告を受けて取扱いを改めるのと、会社(経営者)が自らの意思で取扱いを改めるのを比べると、従業員が受ける印象は正反対です。当然、後者の方が好印象で、多くの従業員は「そんな会社(経営者)のためにがんばりたい」と思うのではないでしょうか。

まとめると、従業員が少ない間に、法律に適合した就業規則を作成して、それに取扱いを合わせるのが良いと思います。

就業規則の相談事例

就業規則を作成する際に、次の2点について、「違法な取扱いをしていて、どうすれば良いでしょうか?」と相談を受ける機会が多いです。

  1. 年次有給休暇を付与していない
  2. 割増賃金を正しく支払っていない

年次有給休暇については、労働基準法によって、取得できる権利が保障されていますので、会社は拒否できないと考えた方が良いです。また、2019年4月から、1年につき5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられています

年次有給休暇を取得することを前提にして、トータルの人件費が変わらないように、昇給額を決めたり、賞与の額を決めたりするようにしてください。

昇給や賞与の支払いは法律で義務付けられていませんが、年次有給休暇の付与は労働基準法で義務付けられていますので、昇給や賞与の支払いを停止してでも年次有給休暇の方を優先するべきです。

割増賃金の支払いについては、割増賃金を込みで賃金を支払う方法もあります。

ただし、この方法は、従業員の同意が必要だったり、就業規則(賃金規程)に規定したり、クリアするために必要な条件がいくつかあります。

もし、キノシタ社会保険労務士事務所に就業規則の作成を依頼される場合は、他のケースも、できるだけ会社の負担にならない方法をアドバイスしています。

小規模企業では、完璧に法律を守っている会社は少ないですが、「経営状態は厳しいけれども、できる限り法律を守りたい」と考えている経営者の下では、従業員もそれを理解しているケースが多くて、トラブルにはなりにくいものです。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

就業規則のご依頼関係