定額の残業手当

労働基準法により、残業手当は残業時間に応じて支払うことが原則とされていますが、毎月一定額の残業手当を支払う方法もあります。

例えば、6万円を定額の残業手当として支払うことにすれば、この6万円は残業手当として支払い済みとなりますので、残業手当の増加を抑えられます。

また、残業手当は「通常の労働時間の賃金」を基準にして125%や135%の割増率で支払うことになっていますが、定額の残業手当は「残業時間」に対する賃金であって、「通常の労働時間」に対する賃金ではありません。

つまり、残業手当の基礎となる賃金から除外できますので、残業手当の単価を下げることにも繋がります。

社員の反発

定額の残業手当は会社にとっては都合の良い制度ですが、社員にとっては「サービス残業ではないか」という不満を抱かせやすく、信頼関係を壊しかねませんので、個人的にはお勧めいたしません。

残業時間を削減する妨げにもなります。

賞与を切り詰めたり、経費を削減したりしても、どうしても残業手当を支払えない場合の最後の手段として認識しておくべきです。

定額の残業手当の導入の条件

会社としては「定額で残業手当を支払っている」と考えていても、取り扱いを間違っていることが多くて、よくトラブルになっています。

そして、追加で残業手当を支払わされることになります。

定額の残業手当の制度を導入する場合は、いくつか注意しないといけないことがあります。

最低賃金をクリアしていること

最低賃金の計算には残業手当を含みませんので、残業手当を除いた金額で計算して、最低賃金をクリアしていないといけません。

また、通勤手当や家族手当も除いて計算することになっています。

残業手当の金額を明示すること

定額の残業手当には、基本給の中に残業手当を含める方法と、特定の手当(業務手当や定額残業手当など名称は何でも構いません)を残業手当として支払う方法があります。

特定の手当を残業手当として支払う場合は、その手当の全額を残業手当として支払うことにすれば、金額を明示することは難しくありません。

一方、基本給の中に残業手当を含める場合は、基本給の内いくらを残業手当として支払っているのか、具体的な金額で明示する必要があります。

「基本給には残業手当を含む」としているだけで、具体的な金額を明示していないと、残業手当を全く支払っていないものと判断され、別途で残業手当を支払わされることになります。

基本給の中に残業手当を含める方法は、どこまでの金額が残業手当なのか、また、残業手当の基礎となる賃金がいくらなのか曖昧になりやすいです。

このため、基本給とは別に特定の手当を残業手当として支払う方法の方が、明確に区別ができて運用しやすいです。

本人の同意を得ること

残業手当を一定額で支払う場合は、社員から個別に同意を得ないといけません。

採用時や賃金の改定時に、残業手当の金額を書面で明示して、本人から同意を得るようにして下さい。採用時に丁寧に説明することが大切です。

超過分の残業手当を支払うこと

定額の残業手当を支払っているとしても、労働基準法は適用されます。1週40時間又は1日8時間を超えて勤務したときは、残業手当を支払わないといけません。

例えば、定額の残業手当として6万円を支給することになっていて、実際の残業時間に基づいて計算した残業手当の金額が8万円だった場合は、差額の2万円を支払わないといけません。

就業規則に記載すること

定額の残業手当を支払う場合は、その内容を就業規則(賃金規程)に規定しないといけません。

例えば、業務手当を残業手当として支払う場合の規定例としては、「第○条の時間外勤務手当、休日勤務手当及び深夜勤務手当として、業務手当を支給する」といった内容になります。

(2014/1作成)
(2014/5更新)