サービス残業の弊害

サービス残業の弊害

サービス残業をさせていると、浮かせた金額以上の弊害があります。

目先の数十万円は得したように思うかもしれませんが、長期的に見ると大損だと分かります。

2年分の遡及支払

賃金の請求権の時効は2年ですので、社員から請求されると、過去2年にさかのぼって残業手当を支払わされます。

例えば、毎日1時間のサービス残業をさせていて、出勤日数が月22日、通常の賃金が1時間1,000円とすると、毎月27,500円の残業手当の不払となって、2年で66万円になります。

これは1人の金額ですので、5人いれば330万円、16人で1000万円を超えます。また、残業時間が1日2時間になると、この倍の金額になります。

毎月支払っていれば支障がなくても、一括で支払わされると、経営に支障が生じる金額ではないでしょうか。

労使関係の悪化

会社が法律違反をしていると、社員は会社に対して不信感を持つようになります。

「会社は法律を無視して自分の都合を優先させている」と社員に受け取られ、社員も、顧客や会社の都合を無視して自分勝手な行動をするようになります。

そして、会社・上司の言うことに反発し、労使関係が悪化していきます。そうなると、社内の問題に手を取られ、本来の業務に集中することができません。

ヤル気の低下

サービス残業をさせていると、「こうしたらお客さんに喜ばれるのになぁ」、「こうしたらもっと早く正確にできるのになぁ」、「こんな方法を試したらどうかなぁ」と思っていても、それを口にすることはありません。

自分の仕事が増えるだけで面倒だからです。

ヤル気がなくなると、仕事に創造性の入る余地がなくなり、言われたことしかやらなくなります。

競争力の低下

サービス残業をさせていると、安易に「残業して対応すれば良い」とダラダラ仕事をするようになります。生産性や効率は無視され、競争力が落ちていきます。

他社では2時間でできる仕事を3時間かけて行うようになり、更に残業手当を支払えない状態になる、という悪循環に陥ります。

利益が出たときにキチンと残業手当を払おうと思っていても、恐らく不可能でしょう。サービス残業がある限り、生産性や効率は向上しません。

離職率の悪化

「法律違反をして安い給料で働かせたい」と思っている経営者の下で働きたいでしょうか。転職先が見付かれば簡単に退職していきます。退職するのは働き口の見付かる優秀な社員からです。

経営者の決断

「利益が出ないから残業手当を支払えない」という現状も分かります。分かりますが、どこかで悪循環を断ち切らないといけません。

直ぐには無理だとしても、徐々に残業手当を増やしていって半年後には適正に支払うことを社員に約束して、同時に社員にも残業時間の削減に協力して欲しいと要請してはいかがでしょうか。

残業時間の長短というのは、経営者の考え方によります。経営者の決断次第です。

賞与の減額、停止

賞与を年間で数十万円も支払っているにもかかわらず、残業手当を支払っていない会社があります。

賞与の支払は法律で義務付けられているものではありませんので、賞与を支払わなかったとしても法律違反になることはありません。

しかし、残業手当は労働基準法で支払が義務付けられていますので、これを支払わないと労働基準法違反になってしまいます。

賞与を支払う余裕があるのであれば、その分を残業手当の支払に回すのが賢明です。

(2013/12作成)
(2014/5更新)