理解させていない就業規則

理解させていない就業規則

  • 当社の社員は就業規則を見ていないと思うのですが、会社から社員に、就業規則の内容を説明しないといけないのでしょうか?
  • 就業規則の内容を社員に説明することは望ましいですが、労働基準法上は、社員に説明することまでは義務付けられていません。

労働基準法上の就業規則の手続き

労働基準法では、就業規則に関する手続きとして、

  1. 就業規則意見書を作成する
  2. 就業規則を労働基準監督署に届出する
  3. 就業規則を周知する

の3点が定められています。これらを満たしていれば、就業規則としての効力が生じます。

会社が社員に就業規則の内容を説明したり、理解させたり、そんなことまでは労働基準法では求められていません。

過去の裁判例でも、社員が就業規則を見たいと思ったときに、いつでも見られる状態にしていれば、その就業規則は有効と判断されています。3.の「就業規則の周知」として求められているのは、この程度です。

就業規則を金庫に隠したりしていると、周知していることにはなりませんので無効になりますが、就業規則を書棚に置いたりして、いつでも見られる状態にしていれば、周知しているものとして有効になります。

そのため、社員が就業規則の内容を知らないというケースが考えられますが、それでも有効と判断されますので、会社はその就業規則に基づいて対処することができます。

例えば、ある言動が、懲戒事由に該当していることを本人が知らなくても、それが懲戒事由に該当するときは、会社は懲戒処分を行うことができます。

就業規則は法律と同じで、「知らなかった」という言い訳は通用しません。就業規則は知っていることが前提で、厳しい言い方かもしれませんが、知らない人が悪いということになります。

もちろん、入社したときや就業規則を変更するときに、就業規則の内容を社員に説明することは望ましいことです。また、採用時に、一定の内容(雇用契約書に書き切れなかった部分)については、就業規則を見せて明示することが義務付けられています。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

就業規則の効力について