就業規則の周知義務とは|3つの周知方法と罰則を解説
就業規則の周知とは(労働基準法106条)
- 就業規則は従業員に対して、どのような方法で周知すれば良いですか?就業規則を印刷して配布する必要がありますか?
- 就業規則の周知方法は労働基準法施行規則によって、3つの方法が示されています。印刷して配布する方法もその1つですが、他の方法も可能です。
労働基準法で定められている就業規則の手続き
労働基準法(第89条)によって、従業員数が10人以上の会社は、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。それ以外にも労働基準法では就業規則に関して、次の手続きが定められています。就業規則を変更した場合も同じです。
- 従業員の過半数代表者を選出する
- 就業規則意見書を作成する
- 就業規則を労働基準監督署に届け出る
- 就業規則を従業員に周知する(このページ)
就業規則の周知については、労働基準法(第106条)によって、次のように規定されています。
使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、・・・を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。
就業規則の周知方法(3つの適法な方法)
そして、厚生労働省令(労働基準法施行規則)によって、適正な周知方法として、次の方法が示されています。
- 職場の見やすい場所に掲示する、又は備え付ける
- 印刷して従業員に配布する
- パソコン等に保存して、自由に確認できるようにする
要するに、従業員が就業規則を閲覧したいと思ったときに、いつでも閲覧できる状態にする必要があります。
「パソコン等に保存する方法」の具体例
3.の方法は、社内イントラネット、共有サーバー、クラウド型の勤怠管理システム等に就業規則のデータを保存して、従業員が自分のパソコンやスマートフォン等から自由に確認できる状態にしておく方法も含まれます。
ただし、閲覧にパスワードが必要な場合は、全ての従業員がそのパスワードを把握している必要があります。閲覧に上司の許可が必要といった状態では、周知しているとは認められません。
従業員数10人未満の会社にも周知義務はあるか
労働基準法第89条の規定は、従業員数が10人以上の会社に対して、就業規則の作成及び届出を義務付けています。一方、労働基準法第106条の規定は、従業員数に関係なく、就業規則の周知を義務付けています。
従業員数が10人未満の会社が任意に就業規則を作成しても、周知していなければ、懲戒処分や不利益な取扱いは認められません。10人未満の会社であっても、就業規則を作成して有効に適用するためには、周知する必要があります。
就業規則を周知しない場合のリスクと罰則
従業員に就業規則を周知していない場合は、どうなるのでしょうか。
従業員に就業規則を周知していないと、従業員はどのような懲戒事由が定められているのか分かりません。どのような言動が懲戒処分の対象になるのか分からない状態で、懲戒処分を科すことは酷ですので、懲戒処分は認められません。
周知義務を怠っていると、懲戒処分だけではなく、就業規則を根拠とする取扱いも無効になります。例えば、時間外労働や休日労働を命じる根拠となりませんし、変形労働時間制の適用等が否定される可能性があります。
就業規則の周知が、その効力発生の要件であることは、最高裁判例(フジ興産事件)でも示されています。就業規則を金庫に保管したりして、周知を怠っている会社がありますが、そのような就業規則は存在しないのと同じです。
なお、就業規則の周知義務を怠っている場合は、労働基準法(第106条)違反として、30万円以下の罰金が設定されています。
就業規則を印刷・配布する方法の3つのデメリット
会社が懲戒処分を行ったり、就業規則で定めている手続きやルールを従業員に守らせるためには、適正な方法で周知する必要があります。
就業規則を従業員に周知する方法として、「2.印刷して従業員に配布する」方法が挙げられていますが、この方法には、次のようなデメリットやリスクがありますので、当事務所ではお勧めしていません。
印刷代と人件費が掛かる
就業規則を作成したときに、人数分の印刷をすると、かなりの枚数になります。また、部分的に就業規則を変更した場合も、その都度、人数分の印刷をすることになります。
印刷代や人件費(コスト)が掛かりますので、ペーパーレス化の流れに合っていないと思います。
適正に更新されない可能性がある
就業規則を作成した後も、法律の改正や制度の見直しに伴って、就業規則を変更する必要があります。最新の状態を保持するために、古い就業規則と新しい就業規則を差し替える必要があります。
しかし、従業員に配布すると、各自で差し替えているか不明で、適正に更新されない可能性があります。就業規則の差し替えを確実に行うために、前に配布をした就業規則を回収しようとしても、「就業規則はどこにあるのか分からない」という者が必ず現れます。
第三者に渡る可能性がある
専門家に依頼して作成した就業規則であれば、問題はないと思いますが、そうでない就業規則は、法律に違反する規定があるかもしれません。そうなると、関係のない第三者から「ブラック企業だ!」と非難される恐れがあります。
また、賃金規程には、手当の構成や金額の決定方法が記載されています。ライバル会社に知られて引き抜きの手段として使われる可能性がゼロではありません。そのようなことがなくても、賃金を詮索されるのは気持ちが良いことではありません。
就業規則の周知義務と説明義務
最初に説明したとおり、3つのいずれかの方法によって、会社は従業員に対する周知義務を履行したことになります。労働基準法では、会社が就業規則の説明をすること、従業員に理解させることまでは求められていません。
例えば、従業員が、違反行為(懲戒事由)として就業規則に定められていることを知らなかったとしても、就業規則を周知していれば、会社は就業規則に基づいて懲戒処分を行うことができます。
従業員が就業規則を自由に閲覧できる状態であれば、「知らなかった」という言い訳は通用しません。法律と同じです。
就業規則の周知とあわせて確認したい記事
- 従業員が就業規則を理解していなくても会社の説明義務はない?
- 労働基準法の手続きを怠った就業規則は無効になる?
- 周知していない就業規則は無効|フジ興産事件の最高裁判決
- 就業規則は製本すべき?掲示・備付け方法の実務ポイント
- 就業規則の届出に必要な書類|労基署への提出方法
- 過半数代表者の正しい選び方|意見書作成前の必須手続き
執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。

