過半数代表者の選出方法

過半数代表者の選出方法

  • 就業規則を作成したときは、従業員の過半数代表者に意見を聴くことが義務付けられているそうですが、従業員の過半数代表者はどのようにして選ぶのでしょうか?
  • 従業員の過半数代表者の選出方法としては、投票、挙手、話合い、同意書の回覧等があります。同意書のサンプルを差し上げます。

従業員の過半数代表者の選出方法

労働基準法による過半数代表者の要件

労働基準法(第90条)によって、次のように規定されています。

「使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」

会社が就業規則を作成・変更したときは、従業員の過半数代表者の意見を聴くことが義務付けられています。

また、会社が36協定やその他の労使協定を作成して締結する場合も、締結をする当事者として、従業員の過半数代表者を選出しないといけません。

なお、従業員の過半数で組織する労働組合がある場合は、従業員の過半数代表者を選出する必要はありません。その労働組合が過半数代表者の代わりになります。

そして、労働基準法施行規則によって、従業員の過半数代表者の要件として、次のいずれにも該当する者であることが示されています。

  1. 労働基準法上の管理監督者でないこと
  2. 投票や挙手等の方法によって選出された者であること

就業規則を作成・変更する場合、36協定等の労使協定を締結する場合に、従業員の権利を保護するために、従業員の意見を聴くことに意義があります。労働基準法上の管理監督者は、労働条件の決定等について経営者と一体的な立場にある者とされていますので、1.により除外されています。

なお、労働基準法上の管理監督者は、従業員の過半数代表者にはなれませんが、労働基準法上の“労働者”に該当しますので、管理監督者も過半数の分母となる従業員の数には含みます。

また、過半数の分母となる従業員には、在籍している全ての労働者を含みます。パートタイマー、アルバイト、嘱託従業員、契約社員、臨時従業員、休業中の従業員、出向中の従業員も含みます。

ただし、役員は雇用・使用する側の“使用者”に該当しますので、雇用・使用される側の“労働者”には該当しません。また、派遣社員は派遣元の会社に雇用される従業員ですので、派遣先の会社の従業員には含みません。

従業員の過半数代表者の選出方法

従業員の過半数代表者の選出方法として、労働基準法施行規則では、投票や挙手等の方法が挙げられています。

就業規則の作成・変更の際に意見を聴取する者、○○の労使協定を締結する者など、選出する目的を明らかにして実施していれば、投票や挙手以外の方法で選出することも可能です。

例えば、従業員の話合い、同意書の回覧など、従業員の過半数がその者の選任を支持していることが明確になっていれば認められます。電子メール等で選出する方法についても、その記録を保存していれば認められます。

しかし、親睦会の代表者を自動的に過半数代表者とするような方法は、選出する目的が明らかにされていませんし、従業員の過半数が支持をしているかどうかが不明ですので、適正ではありません。

また、会社から特定の従業員に、「就業規則を作成したから、ここに意見を書いて欲しい」と言って、適正な選出の手続きを怠っているケースがありますが、もちろん認められません。労働基準監督署の調査があったときに、そのような事実が発覚することがあります。

過半数代表者の具体的な選出の手順

従業員の過半数代表者を選出する具体的な手順の一例を紹介します。

  1. 就業規則の作成・変更の際に意見を聴取する者、○○の労使協定を締結する者を選出する必要があることを説明して、管理監督者以外の従業員の中から、立候補を募集します。
  2. 立候補の応募がない場合は、従業員に管理監督者以外の者から適任者を推薦してもらいます。
  3. 推薦があった従業員に、最多数の者から順番に従業員の代表者になってもらえるか確認をして、応じた者1名を候補者とします。
  4. 就業規則の作成・変更の際に意見を聴取する者、○○の労使協定を締結する者を選出することを明らかにして、投票、挙手、従業員の話合い、同意書の回覧等の方法によって、1.又は3.の候補者を従業員の代表とすることについて、同意(支持)を求めます。
  5. 従業員の過半数の同意(支持)があれば、その者を従業員の過半数代表者として決定します。

会社の意向に基づいて選出された者は、従業員の過半数代表者と認められませんので、立候補の応募がない場合は、他薦による方法が望ましいです。

従業員の過半数代表者を選出するための同意書をダウンロードできるようにしました。よろしければ、編集してご利用ください。Wordです。右クリックをして、ダウンロードできます。

過半数代表者の任期

就業規則を作成・変更して、その前後の時期に法改正があったりして、1年間に複数回、労働基準監督署に就業規則を届け出ることがあるかもしれません。そのような場合は、原則的には、その都度、目的を明らかにして、従業員の過半数代表者を選出しないといけません。

その都度、選出するのは面倒ですので、従業員の過半数代表者に一定の任期を設定することができれば、簡便に処理ができます

労働基準法上は上の要件を満たしていれば、差し支えはありませんので、過半数代表者の任期を明らかにした上で、選出する目的を明らかにして、過半数の同意(支持)を得て選任した場合は、任期を設定できると考えられます。

ただし、過半数の分母となる従業員が入れ替わったり、別の適任者が現れたりすることが想定されますので、無期限は当然不可で、任期は長くても1年間とするべきです。36協定の締結のタイミングに合わせて選出する方法が良いと思います。

過半数代表者の不利益取扱いの禁止

労働基準法施行規則によって、次のことを理由にして、会社が不利益な取扱い(解雇、賃金の減額、降格等)をすることが禁止されています。

  1. 過半数代表者であること
  2. 過半数代表者になろうとしたこと
  3. 過半数代表者として正当な行為をしたこと

過半数代表者の正当な行為としては、就業規則の意見を聴いたときに、反対意見を表明したり、意見書への記入を拒否したりすることが考えられます。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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