就業規則と雇用契約

就業規則と雇用契約

  • 雇用契約書で社員と個別に約束した内容と、就業規則で規定している内容が違っている場合は、どうなるのでしょうか?
  • 雇用契約書で個別に約束した内容が、就業規則で規定している内容より劣っている場合は、個別にした約束は無効になって、就業規則が優先して適用されます。

雇用契約が就業規則より有利

労働条件に関して、社員と個別に約束した内容のことを、雇用契約(労働契約)といいます。

労働条件については、採用時に書面で明示することが、労働基準法で義務付けられています。このため、採用時に、「雇用契約書」や「労働条件通知書」と呼ばれる書類を交付している会社が一般的です。

一方、就業規則は、会社に在籍する全ての社員に対して、一律に適用する労働条件やルールを定めたものです。

そして、雇用契約(労働契約)の内容が、就業規則で定めている内容より、社員にとって有利に定められている(優遇されている)場合は、雇用契約(労働契約)が優先して適用されます。

雇用契約が就業規則より不利

労働契約法第12条により、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となつた部分は、就業規則で定める基準による」と定められています。

雇用契約(労働契約)の内容が、就業規則で定めている内容より、社員にとって不利に定められている(劣っている)場合は、その部分の雇用契約(労働契約)は無効になって、就業規則が適用されます。

要するに、雇用契約(労働契約)の内容と、就業規則の内容に違いがある場合は、社員にとって有利に定められている方が適用されるということです。

例えば、就業規則に「従業員が結婚したときは、慶弔休暇を取得できる」と規定していて、採用時の雇用契約書(労働条件通知書)に「慶弔休暇は取得できない」と記載していたとします。

この場合、会社は慶弔休暇を与える義務があります。社員にとって不利に定められている雇用契約(労働契約)は無効になって、就業規則が適用されます。

パートタイマーとの雇用契約

これに関して問題になりやすいのが、パートタイマーがいるにもかかわらず、パートタイマー用の就業規則がない場合です。

パートタイマーに退職金を支給しなかったり、休職を適用しなかったりする場合は、パートタイマーに適用する就業規則において、適用しないこと(「・・・休職とする。ただし、パートタイマーには休職を適用しない」といった除外規定)を定めておく必要があります。

このような除外規定がないと、パートタイマーにも退職金の支払いや休職の適用、慶弔休暇の取得などが求められたりします。それぞれの項目で適用を除外する規定を設けていれば問題になることはないのですが、漏れのある就業規則が結構あります。

これはパートタイマーに限らず、嘱託社員や契約社員など、雇用形態が正社員と異なる社員全てについても言えることです。

雇用形態ごとに就業規則を作成すれば間違いが起こりにくいので、できれば雇用形態ごとに、少なくとも2種類(月給制の社員用と時間給制の社員用)は就業規則を作成することをお勧めします。

就業規則の効力について