労働基準法より有利な就業規則
労働基準法より有利な就業規則
- 会社の就業規則の内容が労働基準法の内容を上回っていて、従業員を優遇する内容になっています。会社は就業規則に基づいて取り扱わないといけないのでしょうか?
- 就業規則の内容は契約内容として有効に成立していますので、就業規則に従って取り扱わないといけません。
労働基準法より有利な就業規則
就業規則を見ると、労働基準法で定められている内容と比べて、従業員にとって有利な内容で定めているものがあります。例えば、次のような内容です。
- 入社と同時に、年次有給休暇を付与する
- 無効になった年次有給休暇を積み立てて、その後も使用できる
- 私傷病が理由で欠勤した場合に、1年間は80%の賃金を支払う
- 時間外労働に対して、135%の時間外勤務手当を支払う
- 休日労働に対して、150%の休日勤務手当を支払う
就業規則を作成した当初は、経営的に余裕があったり、まじめな従業員しかいなかったり、給与計算を簡素化するためだったり、そのようにした理由があったと思います。何も考えないで、他社の就業規則やモデル就業規則をコピーしただけかもしれません。
時間が経過して、そのような有利な制度を活用する従業員が増えて、会社の負担になっているケースがあります。
労働基準法(第92条)によって、就業規則は労働基準法に反してはならないことが規定されていますので、全ての就業規則は、労働基準法と同等か労働基準法より有利な内容で作成されています。
就業規則に記載している内容は、労使間の契約内容として有効に成立していますので、会社は(従業員も)就業規則の内容を守らないといけません。
就業規則を変更して、従業員の労働条件を引き下げたいと考えるかもしれません。しかし、労働基準法(第1条)によって、「労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならない」と規定されています。
要するに、「労働基準法ではこのようになっているから」という理由で、労働条件を引き下げることが禁止されています。しかし、取扱いを継続することが、現実的に難しい場合もあると思います。
就業規則を変更せざるを得ない場合は、労働契約法(第9条)によって、原則的には、従業員の同意が必要とされています。
また、例外的に、労働契約法(第10条)によって、いくつかの条件を満たしている場合は、就業規則を不利益に変更することが認められています。
就業規則を変更しようとする場合は、どちらかの方法で進めることになると思います。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。