労働基準法と就業規則の関係
労働基準法と就業規則の関係
- 当社の就業規則を見ると、毎年10日の年次有給休暇を与えることになっています。労働基準法では、勤続年数が6.5年以上の従業員には、20日の年次有給休暇を与えることになっていますが、問題はないでしょうか?
- 労働基準法に違反する就業規則は、問題があります。違反している部分は無効になって、労働基準法で定められている内容が適用されます。
労働基準法と就業規則の関係
労働基準法とは、労働条件の最低基準を定めた法律です。最低基準を下回る取扱いは許されませんので、就業規則は労働基準法より、従業員にとって有利な内容で作成する必要があります。
労働基準法(第92条)によって、「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」と規定されています。
また、労働基準法(第13条)によって、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」と規定されています。
就業規則は労働基準法等の法律に違反してはいけないこと、労働基準法の基準を下回る取扱いは無効で、その部分は労働基準法の規定が適用されることになっています。
例えば、労働基準法では、勤続6ヶ月で10日、勤続1.5年で11日、勤続2.5年で12日、勤続3.5年で14日、勤続4.5年で16日、勤続5.5年で18日、勤続6.5年で20日の年次有給休暇を付与することが義務付けられています。
就業規則に、勤続年数に関係なく、毎年10日の年次有給休暇を付与することを規定して、そのように取り扱っているとすると、労働基準法に違反していることになります。違反している取扱いは無効ですので、従業員は、労働基準法に基づいた日数の年次有給休暇を取得できます。
また、例えば、就業規則に、次のように規定していたとしても、労働基準法等に違反する取扱いですので、無効になります。
- 30分未満の時間外労働の時間を切り捨てて、割増賃金を支払う
- 遅刻を3回したときは、1日欠勤したものとみなして、賃金を減額する(又は年次有給休暇を消化する)
- 割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算する必要がある賃金(手当)を含めない
- パートタイマーやアルバイトに年次有給休暇を付与しない
- 退職時に年次有給休暇の取得を認めない
- 年次有給休暇を取得する場合は、許可制にしている
- 65歳まで雇用を継続する制度がない
会社が就業規則を作成・変更して、労働基準監督署に届け出ると、受付の処理が行われますが、労働基準法に違反している部分が見付かると、労働基準監督署から修正するよう指導されることがあります。
一方で、労働基準法に違反している部分があったとしても、そのまま受付の処理が完了することもあります。
その後に、労働基準監督署による調査が行われて、労働基準法に違反していることが発覚すると、是正勧告が出されます。「この就業規則で労働基準監督署が受付をした」と言っても認められません。
就業規則の受付の処理が完了したとしても、労働基準監督署によるお墨付き(保証)が得られたことにはなりません。就業規則は、自分の責任で、労働基準法等の法律に準拠した内容で作成・変更する必要があります。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。