パートタイマー就業規則
パートタイマー就業規則
- パートタイマーがいる場合は、正社員用とは別に、パートタイマー用の就業規則を作成した方が良いのでしょうか?
- パートタイマーと正社員とで労働条件が異なる場合は、それぞれの就業規則があった方が良いです。
パートタイマー就業規則がない
パートタイマーがいるにもかかわらず、正社員用の就業規則しかない場合は、正社員用の就業規則が、パートタイマーにも適用されることがあります。
なぜ、このようなことになってしまうのでしょうか?
正社員用の就業規則の適用範囲で、「パートタイマーについては別に定めるものにより、この就業規則は適用しない」として、パートタイマーの適用を除外していれば、この正社員用の就業規則は、パートタイマーには適用されません。
そこで、正社員用の就業規則とは別に、パートタイマー用の就業規則を作成していれば問題はありません。しかし、パートタイマー用の就業規則がない場合は、問題が残ります。
モデル就業規則を利用して作成した場合に、実際には「別に定めるもの」がないケースがあります。「別に定めるもの」として、パートタイマー用の就業規則を別に作って定めないといけません。
パートタイマーに、正社員用の就業規則が適用される
パートタイマー等も含めて社員数が10人以上になると、労働基準法により、就業規則の作成が義務付けられます。
パートタイマー用の就業規則がないと、就業規則が適用されない社員が存在することになります。就業規則が適用されない社員が存在することは違法で許されませんので、結果的に、パートタイマーにも正社員用の就業規則が適用されることになります。
もしくは、パートタイマーに正社員用の就業規則を適用しないとすると、就業規則が適用されない社員が存在することになって、就業規則の作成義務違反になります。
京都の大学で、非常勤講師に適用する就業規則がないということで是正勧告を受けたという報道もありました。
パートタイマーと労働契約を交わしていても
労働基準法(第92条と第93条)により
- 労働基準法
- 労働協約(労働組合のある会社)
- 就業規則
- 労働契約
の順に効力が弱くなります。上の方が効力が強いです。
つまり、労働基準法に違反する就業規則は無効になって、労働基準法が適用されます。同様に、就業規則に定める基準に達しない労働契約は無効になって、就業規則で定める基準が適用されます。
例えば、正社員用の就業規則に退職金を支払うという規定(退職金規程)があったとします。そして、パートタイマーと個別に交わした労働契約(「雇用契約書」や「労働条件通知書」)に、「退職金は支給しない」と記載していたとしましょう。
このときに、パートタイマー用の就業規則がないと、正社員用の就業規則(退職金規程)が適用され、退職金を支払わされる可能性があります。採用時に、退職金がないことをパートタイマーが承知していても関係ありません。法律の方が優先されます。
このような取り扱いは、退職金だけではありません。パートタイマー用の就業規則がないと、慶弔休暇や休職の適用、賞与の支払い等について、正社員と同じ処遇を求められる可能性があります。
パートタイマーに適用する就業規則
以上より、パートタイマーに適用する就業規則を定めておく必要があります。
パートタイマー就業規則を作成しない方法
パートタイマーにも、正社員用の就業規則を適用する方法です。この場合は、パートタイマー就業規則を別途で作成しなくても構いません。
正社員用の就業規則の適用範囲では、パートタイマーにも適用することにして(適用を除外しないで)、「パートタイマーについて特別の定めをした場合はその定めによる」と追加します。
そして、慶弔休暇や休職等の個々の規定で、その都度、「ただし、パートタイマーについては・・・を適用しない」とします。こうすれば、その項目について、パートタイマーの適用を除外できます。このようにすれば、法律問題をクリアできます。
しかし、パートタイマーが就業規則を見たときに、正社員の労働条件と大きな違いがあると、不公平感を抱いてしまうかもしれません。
また、普通は、賃金の構成が違っていたり、勤務時間が違っていたりすると思います。これらを1つの就業規則で運用すると、複雑で使い勝手が悪くなりますので、就業規則は正社員用とパートタイマー用で、それぞれ個別に作成するのが良いと思います。
パートタイマー就業規則を作成する方法
これも簡単です。まずは、正社員用の就業規則をコピーします。そして、規定を1つ1つ見て、パートタイマーの実態に合わせて規定を削除したり、修正したりします。
パートタイマーには適用しない項目(慶弔休暇や休職など)は削除して、労働条件が異なる項目(出退勤の時間や賃金の構成など)を修正すれば、パートタイマー就業規則が出来上がります。
パートタイマー就業規則を一から作成すると、正社員用の就業規則との関連がチグハグになる場合があります。例えば、パートタイマー就業規則では懲戒事由として定められているけど、正社員用の就業規則では定められていない場合があります。会社としてはどうしたいのか分からず、統一性がなくなります。
したがって、当事務所でもパートタイマー就業規則の作成を依頼されることがあるのですが、上のように正社員用の就業規則を元にして、パートタイマーの処遇を一番よく分かっている方が(ご自身の会社で)作成するのがベストだと回答しております。
ただし、正社員用の就業規則に不備があると、パートタイマー就業規則にもその不備が引き継がれてしまいますので、正社員用の就業規則の整備が欠かせません。そのときは就業規則の診断をご利用いただければと思います。