モデル就業規則の注意点

モデル就業規則の注意点

  • モデル就業規則を利用して、就業規則を作成しようと思っているのですが、何か問題があるのでしょうか?
  • モデル就業規則は無料で手に入ります。しかし、モデル就業規則を使う場合は注意が必要です。

労働基準監督署や業界団体等のモデル就業規則

モデル就業規則は、色んな所から無料で提供されています。そもそも、そのような所はなぜ無料で提供しているのでしょうか?

代表的な所の1つとして、労働基準監督署の関連団体があります。労働基準監督署の主な仕事は、会社に労働基準法を守らせることです。

社員数が10人以上になると、労働基準法により、就業規則の作成が義務付けられます。これを守らせるために、モデル就業規則を提供しています。また、それぞれの業界団体で、モデル就業規則を提供している所もあります。

専門家の社会保険労務士に就業規則の作成を依頼すると、20万円前後が相場です。就業規則の大切さを感じていない会社にとっては高額なため、依頼を躊躇することがあります。このような会社に対して、「無料なら自分で作成するだろう」と思って提供しているのでしょう。

社会保険労務士事務所のモデル就業規則

次に、モデル就業規則を公開している社会保険労務士事務所があります。

その社会保険労務士事務所の業務の一覧の中に、「就業規則の作成・変更」の項目があります。当然、この「就業規則の作成・変更」を依頼して出来上がった就業規則と、公開しているモデル就業規則は全く別物でしょう。

20万円も出して作った就業規則には、それなりの価値がないと依頼者に納得してもらえません。逆に言うと、無料のモデル就業規則は、それなりの価値しかないということではないでしょうか。

モデル就業規則の注意点

モデル就業規則の中には、穴埋めで簡単に出来上がってしまうものもあります。しかし、その後が大事なのです。もし、その就業規則でトラブルが起きたとしても、会社の自己責任です。

例えば、次のような質問をされたら、どうでしょうか?

  1. 年次有給休暇の届出は、いつまでに行ってもらいたいですか?(労働基準法上は前日までに届け出ていれば認めないといけませんが、1週間前に届け出るようお願いすることは可能です。)
  2. 休職期間を1年間と設定して、会社の業務に支障は生じませんか?(休職期間や復職など、労働基準法には休職に関する規制は定められていません。)
  3. 上司や同僚等の悪口を、インターネット上(ツイッターやフェイスブック等)に発信、公開している従業員がいたらどうでしょう?就業規則に定めて、根拠を持って注意できるようにするべきではないでしょうか?
  4. 通勤手当をごまかしている社員を見付けたときは、会社はどのように対応したいですか?

このように具体的に聞かれれば、会社の考えを答えられるはずです。社会保険労務士がいれば、相談をしながら会社の考えが固まってくることもあります。

しかし、モデル就業規則は自らの手で、あるべき姿を模索しながら作り上げないといけません。いい加減に作成すると、立ち止まって考える必要がある事項を見逃して、会社の思惑とは違ったものが出来上がってしまいます。

そして、そのような事実が起きて初めて、そのことに気付くのです。また、その際、会社は就業規則に記載しているとおり対応することが義務付けられます。就業規則を不利益に変更すること、労働条件を引き下げることは簡単にはできません。

モデル就業規則を利用する場合は、1つ1つの規定に対して自問自答をしながら進める必要があります。ただし、自問自答が行き過ぎて、会社にとって都合が良いように、法律に違反する内容に書き換えてしまったというケースもありました。当然、法律に違反する規定は認められません。

行政書士や税理士が作った就業規則

無料のモデル就業規則とは少し違いますが、無料で就業規則を作成している行政書士や税理士がいるようです。仮に労働基準法の知識があったとしても、労働関係の過去の判例まで勉強されている方はいないと思います。

就業規則は、「とりあえず形になったらそれで良い」というものではありません。将来のリスクを見通して作成しないと、会社の立場が弱くなってしまいます。

専門家でなければ多種多様なリスクに気付くことは難しいと思います。就業規則の作成は、労働法の専門家である社会保険労務士に依頼するようお勧めいたします。

就業規則の作成について