是正勧告と就業規則

是正勧告と就業規則

  • 労働基準監督署の調査があって、就業規則の作成と届出をしていないことが発覚して、是正勧告を受けました。どうすれば良いでしょうか?
  • 指定された是正期日までに、就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出る必要があります。場合によっては、是正期日を延長してもらえることがあります。

是正勧告と就業規則

労働基準監督署では定期監督を行っていて、その違反状況が公表されています。労働基準監督年報によると、令和4年の法違反のランキングは、次のようになっています。

  1. 健康診断(安全衛生法66条から66条の6)
  2. 安全基準(安全衛生法20条から25条)
  3. 労働時間(労働基準法32条)
  4. 割増賃金(労働基準法37条)
  5. 年次有給休暇(労働基準法39条)
  6. 労働条件の明示(労働基準法15条)
  7. 賃金台帳(労働基準法108条)
  8. 年次有給休暇管理簿(労働基準法施行規則24条の7)
  9. 就業規則(労働基準法89条)
  10. 時間把握(安全衛生法66条の8の3)

労働基準法89条の就業規則に関する違反が約1万件で、毎年10位以内に入っています。なお、3.労働時間(労働基準法32条)については、36協定が未届の場合に、法32条違反という扱いになります。

労働基準監督署の調査には、「定期監督」と「申告監督」と呼ばれるものがあります。

これらの調査があると、従業員数が10人以上の会社については、就業規則の作成及び届出の有無がチェックされます。そして、就業規則の作成や届出を怠っている等、労働基準法や安全衛生法の違反が発覚したときは、是正勧告が行われます。

是正勧告を受けた場合は、是正期日までに就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出ないといけません。

なお、就業規則の作成義務については、労働基準法第89条で定められていますが、この規定に違反した者については、30万円以下の罰金が設定されています。是正勧告に従って、是正期日までに就業規則を作成して届け出れば、罰則が科されることはありません。

是正期日を守らないで放置していると、会社・経営者が書類送検される可能性があります。

そのため、「とにかく就業規則を早急に提出しなければならない」と考えて、他社の就業規則をコピーしたりして、安易に作成することは避けるべきです。その場しのぎで作ったとしても、会社はその就業規則に拘束されますので、会社の実態と合っていないと不都合が生じます。

是正期日に間に合わないときに、1つできるアドバイスとしては、労働基準監督署に是正期日の延長を相談することです。遅れた理由、いつまでなら是正できるのかを説明すれば、是正期日を延長してもらえることがあります。

もし、当事務所に就業規則の作成を依頼する場合は、是正期日を延長してもらうための書類を差し上げます。

労働基準監督署の調査を受けると、36協定の未届など、最初のランキングに示したような違反が発覚するケースが多いです。中小零細企業では、指摘事項がない会社の方が少ないと思います。

最近は、法令遵守やコンプライアンスが注目されていますので、「我が社も法律違反がないようにしたい」という気持ちがあっても、「何から始めれば良いのか分からない」→「日常業務が忙しい」→「法令遵守は後回し」→「労働基準監督署の調査」→「是正勧告」というパターンが多いです。

労働基準監督署による調査、是正勧告を受ける前に、就業規則を作成して整備しましょう。当たり前のことですが、これが一番の対策です。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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