個人事業の就業規則の作成義務
個人事業の就業規則の作成義務
- 会社組織ではなく、個人事業であっても、就業規則は作成しないといけないのでしょうか?
- 個人事業であっても、従業員数が10人以上の場合は、労働基準法によって、就業規則の作成が義務付けられます。
個人事業の就業規則の作成義務
労働基準法(第89条)では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に対して、就業規則を作成することを義務付けています。
また、労働基準法(第10条)によって、「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」と規定されています。
個人事業主という言い方をしますが、この“事業主”に該当します。つまり、会社組織や個人事業の区別はなく、営利を目的としない医療法人や社会福祉法人、宗教法人等も同じように扱われます。
したがって、個人事業であっても、従業員を10人以上雇用している場合は、就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出ないといけません。
従業員が1人2人でしたら、個別に労働条件や職場のルールを定めて、不都合なことがあれば、その都度、話し合ったり、経営者が個々の従業員に注意や指導を行えます。しかし、従業員が増えると、それが難しくなります。
不公平な対応を排除して、統一的・画一的な対応が求められることから、従業員に共通する労働条件や職場のルールを定めたものとして、就業規則が必要とされます。労働基準法ではその基準を10人として、就業規則の作成を義務付けています。
このように、労働基準法で就業規則の作成が義務付けられている趣旨から考えると、個人事業や会社組織で区別されないことが分かります。
キノシタ社会保険労務士事務所では、個人事業でも就業規則の作成を承ります。個人事業でいうと、過去に、クリニック、飲食業、農業、保育園、美容業、造園業などのご利用がありました。
ところで、就業規則の届出に関連して、36協定についても相談を受ける機会が多いです。
36協定については、時間外労働の可能性がある場合は、従業員が1人であっても、毎年、労働基準監督署に届け出ないといけません。36協定は就業規則と違って、従業員が10人以上になってから届け出れば良いというものではありません。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。