36協定【静内郵便局事件】

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静内郵便局事件 事件の概要

郵便局(郵政省)の職員に、郵便物を配達するために超過勤務を命令したのですが、職員が拒否しました。

これを理由に、郵便局(郵政省)は職員に対して懲戒処分(戒告処分)を行いました。

職員は、郵便局(郵政省)が行った超過勤務命令は個別の同意がない不当な命令であると主張して、懲戒処分(戒告処分)の取消しを求めて、郵便局(郵政省)を提訴しました。

静内郵便局事件 判決の概要

郵政省と労働組合が合意した労働協約には、やむを得ない事由がある場合は、郵政省は職員に時間外労働又は休日労働をさせることができる旨が定められていた。郵政省就業規則にも、同様の規定が設けられていた。

また、静内郵便局長と労働組合支部長との間において、労働基準法第32条又は第40条の労働時間を延長できる旨の労使協定(36協定)が締結されていた。

その日は職員が勤務時間内に配達するべき郵便物を数多く持って戻ってきたため、郵便局が時間外労働を命じたもので、労働協約(就業規則)に定めている「やむを得ない事由がある場合」に該当する。

また、「国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法」の第6条の規定に基づいて、郵政大臣が制定した「郵政事業職員勤務時間、休憩、休日および休暇規程」には、所属長が職員に対して、一定の場合に時間外勤務を命じることができる旨が定められている。

これは国家公務員法第98条で定められている職務上の命令に当たるものとして、時間外労働を命じられた職員は時間外労働をする義務がある。

解説−36協定

郵便局の職員に対して、本人から個別の同意を得ていない状態で、時間外労働を命じることができるのかが争われた裁判例です。

当時の郵便局の職員は特別職の国家公務員でしたが、一般企業の従業員と同様に労働基準法が適用されますので、考え方に違いはありません。

労働協約と就業規則には、やむを得ない事由がある場合は、職員に時間外労働又は休日労働をさせることが規定されていて、労働基準法第36条に基づいて労使協定(36協定)が締結されていました。

これを根拠にして、やむを得ない事由がある場合は、個別の同意がなくても時間外労働を命じられることを示しました。時間外労働の命令が有効ですので、これに応じなかったことを理由にして、懲戒処分を行うことは可能です。

なお、労働協約は労働組合がある会社に限られますので、必須の条件ではありません。労働組合がない会社では、就業規則が時間外労働や休日労働を命じることができる根拠になります。

つまり、就業規則に時間外労働や休日労働を命じることを記載していれば、それが労働契約の内容になりますので、個別に同意を得なくても、時間外労働や休日労働を命じることができます。

36協定については、従業員の過半数代表者(過半数労働組合)と締結して、労働基準監督署に届け出ることによって、法定労働時間(労働基準法第32条)を超えて労働させることが可能になります。

36協定は、時間外労働や休日労働をさせても労働基準法違反にならないという効果があるだけで、時間外労働や休日労働を命じる根拠にはなりません。

適法に時間外労働を命じるために36協定の締結と届出は欠かせませんが、それだけでは不十分で、就業規則を作成して時間外労働や休日労働を命じる旨を定めておく必要があります。