適当に作成した就業規則の変更
適当に作成した就業規則の変更
- 当社の従業員数は5人ですので、就業規則の作成義務はありません。とりあえず、自分で就業規則を作成して、問題があれば、そのときに修正して対応しようと考えています。
- 就業規則の作成は自由に行えますが、就業規則の変更は自由に行えません。最初に作成する就業規則が大事ですので、望ましい方法ではないと思います。
適当に作成した就業規則の変更
就業規則の作成
就業規則については、労働契約法(第7条)によって、次のように規定されています。
「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」
要するに、会社が従業員に就業規則を周知すれば、その就業規則が労働契約の内容として成立することが示されています。
また、労働基準法(第92条)によって、「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」と規定されていて、就業規則は労働基準法等の法律に違反してはいけないことが示されています。
したがって、労働基準法等の法律に違反していなければ、就業規則は会社が自由に作成できます。
就業規則の変更
しかし、就業規則の変更については、労働契約法(第9条)によって、次のように規定されています。
「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。」
つまり、就業規則を従業員にとって不利益に変更するときは、全ての従業員から同意を得る必要があります。同意が得られなければ、原則として、就業規則を不利益に変更することはできません。
この規定の例外として、労働契約法(第10条)によって、次のように規定されています。
整理すると、次の事情に照らして合理的と認められる場合は、従業員から同意が得られなくても、就業規則を不利益に変更することができます。
- 従業員が受ける不利益の程度
- 労働条件を変更しなければならない必要性
- 変更後の就業規則の内容の相当性
- 従業員との話合いの状況
就業規則を不利益に変更する場合は、会社はこれらの条件を1つずつ検討してクリアする必要があります。クリアできなければ、就業規則の変更は認められません。
例えば、休職期間や慶弔休暇の日数を少しだけ短縮したり、従業員に及ぶ不利益の程度が小さいときは、他の条件のハードルは低くなります。一方、賃金を引き下げたり、不利益の程度が大きいときは、他の条件のハードルは高くなります。
就業規則の不利益変更について、労使間でトラブルになると、最終的には裁判所の判断によりますが、結果を予測することは困難です。また、結果が出るまで時間を要します。
少なくとも、就業規則を初めて作成する場合と比べて、就業規則の変更は自由に行うことができません。
初めての就業規則の作成
以上により、「最初に作る就業規則がいかに重要か」ということがご理解いただけると思います。
就業規則の不利益変更を避けるために、最初に作成する就業規則は、労働基準法等の法律に違反しない程度で、できるだけ低い労働条件で定める方が安全です。
しかし、専門外の方が、「これは法律で決まっている事項だから...」「これは法律で決まっていない事項だから...」と、それぞれの規定に関連する法律の有無及び内容を理解して、進めることは難しいです。
例えば、割増賃金の計算方法が間違っていたり、年次有給休暇の取得を許可制にしていたり、育児介護休業法の法改正に対応していなかったり、これだけではありません。他にもたくさんの間違った規定を見てきました。
当事務所でなくても構いませんので、初めての就業規則は、専門家のサポートを受けて作成する方法が望ましいです。専門的なテクニックを用いて、モデル就業規則より充実したものが出来上がると思います。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。