とりあえず作って後から変更

とりあえず作って後から変更

  • 当社は従業員数が5人ですので、今の所、就業規則の作成は義務付けられていません。ですので、素人ながら自分で就業規則を作成して、後で不都合が生じれば、そのときに変更しようと考えています。
  • 就業規則の作成は自由に行えますが、就業規則の変更は自由に行えません。最初に、どのように作成をするのかが非常に大事ですので、そのような考えはしない方が良いと思います。

就業規則の作成と変更

就業規則の作成については、労働基準法の第90条で、次のように定められています。

「使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」

要するに、就業規則を作成又は変更するときは、従業員の過半数代表者の意見を聴かなければならないということです。この規定のポイントは、過半数代表者の意見を聴くことが義務付けられているだけで、それが反対意見であっても構わないということです。作成する場合も変更する場合も同じです。

また、労働基準法の第92条では、次のように定められています。

「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」

就業規則は労働基準法等の法令に違反してはいけないということです。当然、作成する場合も変更する場合も同じです。

以上を整理しますと、労働基準法等の法令に違反していない限り、就業規則は、会社が自由に作成(変更)できるということになります。

就業規則の変更

しかし、就業規則の変更に関しては、労働契約法の第9条で、次のように定められています。

「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。」

要するに、就業規則を変更して、従業員の労働条件を不利益に変更するときは、従業員の合意が必要ということです。但し書きの例外がありますが、原則的には、全ての従業員から合意を得られなければ、就業規則を不利益に変更することができません。

次に、その例外として、労働契約法の第10条で、次のように定められています。

「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。」

簡単にまとめますと、次の事情に照らして合理的と認められる場合は、就業規則を変更して、従業員の労働条件を不利益に変更することができます。

  1. 労働者の受ける不利益の程度
  2. 労働条件の変更の必要性
  3. 変更後の就業規則の内容の相当性
  4. 労働組合等との交渉の状況

就業規則を不利益に変更する際は、会社はこれらの条件を1つ1つ検討してクリアする必要があり、クリアできなければ、変更は認められません。

例えば、休職期間を少しだけ短縮したり、不利益の程度が比較的小さい場合は、他の条件のハードルは低くなります。一方、賃金を引き下げたり、不利益の程度が大きい場合は、他の条件のハードルは高くなります。

労使間でトラブルに発展した場合に、就業規則の不利益変更が認められるかどうかは、最終的には裁判所の判断によるのですが、結果を予測することは難しいです。

少なくとも、就業規則を最初に作成する場合と比べて、就業規則の変更は自由に行うことができません。

就業規則の作成は慎重に

そのため、「最初に作る就業規則がいかに重要か」ということがご理解いただけると思います。

就業規則の不利益変更を避けるために、最初に作る就業規則の内容は労働基準法等の法律に違反しない程度で、できるだけ低い労働条件で定めるべきでしょう。

しかし、専門外の方が、「これは労働基準法で決まっているから...」「これは法律で決められていることではないから...」と、それぞれの規定に関連する法律の有無を理解して、進めていくことは難しいのではないでしょうか。

例えば、年次有給休暇を許可制にしていたり、割増賃金の計算方法が間違っていたり、定年年齢が60歳未満になっていたり、休職期間が2年になっていたり、これだけではありません。他にもたくさんの間違った規定例を見てきました。

当事務所でなくても構いません。就業規則は、専門家のサポートを受けて作成してください。

就業規則の素朴な疑問