曖昧な就業規則
曖昧な就業規則
- 就業規則には細かいことは記載しないで、曖昧な部分を残して作成した方が良いと言われたのですが、いかがでしょうか?
- わざわざ会社を制限するような規定は設けない方が良いですが、そうでない部分については、労使間で思い違いが生じないように、具体的に規定した方が良いと思います。
曖昧な就業規則
例えば、就業規則を作成するときに、服務規律の章では、従業員の遵守事項や禁止事項を定めますので、細かいことを規定しても会社に不利益が生じることはありません。
就業規則の服務規律に、細かいことまで具体的に規定していれば、禁止している行為に該当することが明確になりますので、会社としても違反行為を発見しやすくて、注意や指導をしやすくなります。
反対に、就業規則の服務規律に、「会社に不利益を与えるような言動をしないこと」のように、抽象的な規定しかなければ、それに当てはまるのかどうか、労使間で意見が一致しにくいです。
そして、問題が公になって、従業員から「違反行為と知らなかった」と言われると、結果的に労働者保護が優先されて、従業員の主張が認められることになります。
想定される遵守事項や禁止事項を具体的に規定して、従業員の言動がそれに該当すれば、「違反行為と知らなかった」は通用しません。就業規則の禁止事項に該当するかどうか、それを知り得る立場にあったかどうかが重要で、実際に本人が知っていたかどうかは重要ではありません。
また、例えば、従業員が不正に通勤手当を受給していたことが発覚したときは、会社としては、さかのぼって差額を返還させたいと考えるのが当然でしょう。悪質な場合は、以後の通勤手当の支給を停止したいと考えるかもしれません。
そのときに、就業規則の規定が曖昧であったり、規定自体がないと、判断をする根拠がありません。会社と従業員が、それぞれ自分の都合の良いように考えてトラブルになってしまいます。
キノシタ社会保険労務士事務所では、様々なトラブルを想定して、例外的なケースも具体的に規定する方が望ましいと考えて就業規則を作成しています。
基本的に、労働基準法は会社の義務を定めたもの、就業規則は従業員の義務を定めたものです。就業規則は、法律に違反する内容は記載できませんが、労働条件を定めた契約内容として有効に成立します。会社を守る武器になります。
就業規則に、細かいことまで具体的に規定しないということは、様々なトラブルの想定を怠っているだけではないかと思ってしまいます。
言うまでもありませんが、わざわざ会社を制限するような規定は設けない方が良いです。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。