厳しい就業規則
厳しい就業規則
- 就業規則を厳しくすると、従業員は萎縮しないでしょうか?
- 行き過ぎた規定は委縮すると思いますが、ある程度、厳しい就業規則の方が、多くの従業員に歓迎されます。会社に対する信頼感や安心感にも繋がります。
厳しい就業規則
例えば、通勤手当について、利用していない通勤経路で会社に申請をして、不正に通勤手当を受給している従業員がいたとします。
もし、会社がこれを放置していると、他の従業員は、「不正行為は許せない!」「会社は気付いていないのか!」「私もそうしようかな?」と思うのではないでしょうか。これが蔓延すると、会社に対する信頼感や従業員同士の仲間意識がなくなっていきます。
このような行為が発覚したときは、放置しないで、不正に受け取った通勤手当を返還させるべきです。その上で、更に厳しく、就業規則に「悪意をもって不正に通勤手当を受けていた者については、以後の支給を停止することがある」といった規定を設ける方法が考えられます。
例えば、「遅刻をした者は解雇する」「勤務時間中に私語をした者は出勤停止とする」というような行き過ぎた規定であれば、従業員は委縮すると思います。しかし、通勤手当について、例示したような規定で従業員は萎縮するでしょうか?
そうは思えません。普通に働いている従業員にとっては何の影響もありません。我々一般人が普通に生活していて、逮捕されないのと同じです。
犯罪者を取り締まることによって、社会の安全が保たれます。同じように、不正行為をした従業員を就業規則に基づいて処分することによって、職場の秩序が保たれて、他の従業員は会社を信頼して、安心して働けるようになります。
また、不正行為をした従業員に対する懲戒処分については、「それは仕方がない」「当然の報いだ」と考えて、従業員同士の一体感が生まれます。
緩い就業規則
不正に受け取った通勤手当を返還させる規定、以後の支給を停止する規定がない会社で、不正行為が発覚したときは、どのように対応するのでしょうか。
当然、不正に受け取った通勤手当は返還させたいと思うでしょう。このような行為は詐欺に該当しますので、法律的には返還させられます。
しかし、従業員が、「そんなことは就業規則に書いていない!」と主張してくる可能性があります。会社としては引き下がれませんので、この従業員と対立して、結果的に解雇や退職に至ることがあります。それで良いのかもしれませんが、会社は無駄な労力を消費してしまいます。
不正行為の予防
犯罪者は法律に詳しいものです。これと同じで、トラブルを起こす従業員は就業規則をよく見ています。もし、通勤手当を不正に受給しようと考えている従業員が、上のように定められた就業規則を見ると、どう思うでしょうか?
「以後の支給を停止することがある」と規定されていると、リスクが大きいので、普通は躊躇します。このように厳しい就業規則は、問題行動を起こそうとしている従業員に、その行動を止めさせる効果があります。
例えが悪いかもしれませんが、外出するときは鍵を掛けます。鍵を掛け忘れて泥棒に入られると、泥棒は捕まって罪を償います。もし、鍵を掛けていたら泥棒を生み出さなかったかもしれません。
就業規則を厳しくしておけば、問題行動にブレーキを掛けます。就業規則を厳しくすることは、逆に従業員に対する優しさではないでしょうか。
鍵を掛けていなくても泥棒がいない社会、厳しい就業規則がなくても不正行為がない会社が理想ですが、現実的には難しいです。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。