就業規則を作成した方が良い理由
就業規則を作成した方が良い理由
- 就業規則は作成した方が良いでしょうか?
- 従業員数が10人未満の会社であっても、就業規則を作成しておけば、労使間トラブルの予防に役立ちます。
就業規則を作成した方が良い理由
こちらで就業規則が必要な理由を説明していますが、また別の視点から、就業規則が必要な理由を説明いたします。
その前に、「ハインリッヒの法則」と呼ばれるものがあります。
「ハインリッヒの法則」とは、労働災害の発生に関する法則で、1件の重大な事故には、その背後に重大な事故に至らなかった29件の軽微な事故が存在し、更にその背後には事故には至らなかった300件の異常(ヒヤリとした経験)が存在するというものです。
つまり、重大な事故が発生する前に、必ずそれを予感させる軽微な事故が発生しているということです。その軽微な事故が発生した段階で対処しておけば、重大な事故の発生を予防できます。
また、ヒヤリとした経験(異常)を集めて、再発しないよう安全対策を実施できれば、軽微な事故の発生も予防できます。
ハインリッヒの法則は、会社と従業員の間で生じるトラブルでも同じことが言えます。
例えば、裁判に訴えられたり、労働基準監督署に申告されたり、過労死が発生したり、横領が発覚したりといったことが重大なトラブル(重大な事故)とすると、その前に軽微なトラブル(軽微な事故)が発生していたはずです。
例えば、従業員から残業手当を支払うよう求められたり、不満を言って退職する従業員が現れたり、上司の業務命令を無視したり、遅刻や欠勤を繰り返したり、物品を横流ししたり、就業規則に違反したりといったトラブルです。
このような軽微なトラブルは、その従業員が退職すれば解決するものではありません。その従業員は、会社に対して不満を持っていたことは明らかです。他の従業員についても、程度の差があるとしても、会社に対して不満を持っていると考えるのが自然です。
したがって、1つのトラブルが片付いたとしても、その原因を見付け出して改善しない限り、再び軽微なトラブルが発生して、更に重大なトラブルが発生する可能性が残ったままです。
軽微なトラブルが発生していない職場では、視野を広げて、300件の異常(ヒヤリとした経験)の方に目を向けましょう。従業員による相談が、ハインリッヒの法則で言う「ヒヤリとした経験」に該当すると考えられます。
事前に相談もなく、急に、従業員が裁判に訴えたり、労働基準監督署に申告したりすることは考えにくいです。
従業員から労働条件に関する相談があったときに、経営者や上司が、その場しのぎの回答をしたり、不公平な取扱いをしたり、法律違反を強要したりして、会社が対応を間違えると、何気なく思っていた「疑問」が、会社に対する「不満や不信」に変わります。そして、軽微なトラブルが発生する土壌が生まれます。
従業員から相談があったときに、丁寧に回答したり、法律に適合するよう改善したり、その都度、適切に対応していれば、その後の軽微なトラブルの発生を防止できます。
そんなときに役に立つのが、就業規則です。
就業規則は、労働に関する取扱いをほぼ網羅していますので、労働条件に関する相談があったときは、経営者や上司は就業規則を見せながら説明できます。就業規則には、法律に違反する内容は記載していないはずですので、間違った説明をすることもないでしょう。
就業規則を作成して、法律の改正に合わせて、その都度、就業規則を変更していれば、従業員からの相談に適切に対応できるようになります。
結果的に、労使間のトラブルの予防に役立ちます。従業員数が10人未満の会社にとっても同じです。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。