就業規則を作成するデメリット
就業規則を作成するデメリット
- 当社は従業員数が5名ですので、就業規則を作成する義務はないのですが、当社が就業規則を作成することで何かデメリットはありますか?
- 短期的な視点で考えると、デメリットと受け取られることがあるかもしれませんが、長期的な視点で考えるとメリットの方が大きいと思います。
就業規則を作成するデメリット
従業員数が10人未満の会社は、就業規則の作成は義務付けられていません。就業規則を作成するかどうかは会社の自由です。もし、就業規則を作って面倒なことが起こるようであれば、就業規則は作らない方が賢明です。
私は就業規則の専門家として、たくさんの相談を受けていますが、初めて就業規則を作成するときに、次のようなことを心配される方がいらっしゃいます。当てはまる場合はデメリットと言えるでしょう。
- 従業員の権利意識を増長しないか?
- 柔軟な対応が不可能にならないか?
従業員の権利意識を増長
例えば、年次有給休暇を与えていなかったり、割増賃金を適正に支払っていなかったり、会社が法律的に間違った取扱いをしている場合は、従業員が出来上がった就業規則を見て、正しい取扱いをするよう求めてくる可能性があります。
その求めに応じると、会社の負担が増えますので、デメリットと言えるかもしれません。しかし、年次有給休暇を与えて、割増賃金を適正に支払うことは、普通のことです。会社を大きくしようと考えているのであれば、どこかのタイミングで、本来のあるべき姿(普通の会社)に切り替える必要があります。
そして、中には、「余裕ができたら正しい取扱いにしたいけど、今はちょっと難しい」と言う経営者がいらっしゃいますが、余裕ができることはまずありません。従業員の数が2倍に増えると、比例して会社の負担(必要な余裕)も2倍に増えるからです。
従業員が増える前に、トラブルが表面化する前に、対応する方が賢明と思います。また、従業員にも考え方を改めてもらうことがあったりしますので、従業員が少ない方が指導や教育の手間が掛かりません。
従業員との関係性にもよりますが、「年次有給休暇は取っても良いけど、仕事に支障が出ないよう調整して欲しい」と頼めば、聞き入れてもらえることが多いです。
また、割増賃金については、賞与を減らしたり、残業を抑制したり、(最後の手段ですが)定額で支払うことにしたり、対応策はいくつか考えられます。
柔軟な対応が不可能
就業規則は会社のルールとして、従業員に守らせることができる一方、会社もそのルールに縛られて、「柔軟な対応ができなくなるのではないか?」と心配される経営者がいらっしゃいます。
しかし、例えば、会社が特定の従業員の賃金を引き下げたいと思っても、本人の同意がなければ引き下げることはできません。従業員の労働条件を引き下げることは、自由に(柔軟に)行うことはできません。このような取扱いは、就業規則があってもなくても同じです。
従業員ごとに個別に定める賃金額や契約期間等は雇用契約書(労働条件通知書)で定めますが、就業規則は全ての従業員に共通する事項を定めるものです。労働基準法などの法律で定められた最低限度で就業規則を作っておけば、足かせになるようなことはありません。
就業規則を作成するメリット
就業規則を作成するメリットはたくさんあります。
- 従業員が安心して働ける
- 労使間のトラブルを防止できる
- 懲戒処分を行える
- 組織運営を効率的に行える
- 会社が間違って違法な対応をすることを防止できる
就業規則を作成することによるメリットは、今回のメインテーマではありませんので、ここでは詳しい内容は省略します。
一番大きなデメリット
就業規則に記載している内容はルールとして、会社も従業員も、就業規則に基づいた対応をするよう求められます。もし、会社が想定していた取扱いと、就業規則に記載している内容が違っているとすると、思い違いが生じてトラブルになります。
就業規則の1つ1つの規定の意味を理解しないで適当に作ると、このようなデメリットが表面化します。うまく作成をすればデメリットは生じないはずですが、規定の仕方によってはデメリットが生じる恐れがあります。できれば専門家に依頼をして作成するようお勧めいたします。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。