所定超と法定超の割増賃金(残業手当)|就業規則の規定例

所定超と法定超の割増賃金(残業手当)

  • 出勤日数は週4日、勤務時間は1日4時間と定めて、パートタイマーを採用しました。1日4時間を超えて勤務したときは、割増の残業手当を支払わないといけませんか?
  • パートタイマーに適用する就業規則にどのように記載しているか、本人に交付した雇用契約書にどのように記載しているかによります。

所定超と法定超の割増賃金(残業手当)

割増賃金(残業手当)の支払い方法

従業員が時間外労働をした場合の時間外勤務手当の支払い方法は、通常は次のどちらかです。

  1. 法定労働時間を超えた労働時間に対して、125%の時間外勤務手当を支払う
    (法定労働時間内で所定労働時間を超えた労働時間に対して、100%の通常の賃金を支払う)
  2. 所定労働時間を超えた労働時間に対して、125%の時間外勤務手当を支払う

従業員が休日労働をした場合の休日勤務手当の支払い方法は、通常は次のどちらかです。

  1. 法定休日の労働時間に対して、135%の休日勤務手当を支払う
    (法定外休日の労働時間に対して、100%の通常の賃金、又は、125%の時間外勤務手当を支払う)
  2. 所定休日の労働時間に対して、135%の休日勤務手当を支払う

1.と3.は、労働基準法で定められている最低基準で支払う方法です。

労働基準法によって、原則として、労働時間は1日8時間以内1週40時間以内とすることが定められています。

この法定労働時間を超えて勤務した時間に対して、125%の時間外勤務手当(割増賃金)を支払うことが義務付けられています。

また、労働基準法によって、毎週1日は休日を与えることが定められています。

例えば、日曜日と土曜日を休日と定めていて、同じ週の日曜日と土曜日の両方に出勤させた場合は、後ろ休日(法定休日)に勤務をした時間に対して、135%の休日勤務手当(割増賃金)を支払うことが義務付けられています。

2.と4.は、それぞれの会社で定めている労働時間及び休日を基準にして支払う方法です。労働基準法の最低基準で支払う方法より対象とする範囲が広いので、高額になります。従業員にとっては有利な方法です。

例えば、所定労働時間を1日7時間30分と定めていて、9時間30分勤務をしたとすると、所定労働時間を超える2時間に対して、125%の時間外勤務手当を支払います。

所定労働時間(7時間30分)を超えて8時間に達するまでの30分については、労働基準法上は、割増で支払う義務はありません(100%分の賃金で構いません)が、事務処理が簡単で、金額も大きくありません(30分×25%です)ので、正社員については、所定労働時間を基準にして割増賃金を支払っている会社が多いです。

また、例えば、日曜日と土曜日を休日と定めている会社では、どちらの休日についても、勤務をした時間に対して、135%の休日勤務手当を支払います。

労働基準法上は、片方(1週間に1日)の休日を確保していれば、135%の休日勤務手当を支払う義務はありません(100%分の賃金で構いません)が、事務処理の都合や従業員の不満解消等のため、所定休日を基準にして135%の休日勤務手当を支払っている会社もあります。

なお、所定労働時間と所定休日については、会社の就業規則、及び、本人に交付する雇用契約書(労働条件通知書)に記載することになっています。

就業規則と雇用契約書

就業規則(賃金規程)を確認してください。「1.又は2.」、「3.又は4.」で規定していると思います。

雇用契約書を確認してください。なお、当事務所が提供している雇用契約書の雛形では、次のように、それぞれの割増率を記載することにしています。

  1. 法定超の時間外労働
  2. 所定超の時間外労働
  3. 法定休日の休日労働
  4. 法定外休日の休日労働

このときに、就業規則は、法定超の時間外労働と法定休日の休日労働に対して、割増賃金(125%・135%)を支払うことになっていたとします(1.と3.)。

雇用契約書も同様に、法定超の時間外労働と法定休日の休日労働に対して割増賃金(125%・135%)を支払うことになっていて、(法定内)所定超の時間外労働と法定外休日の休日労働に対して100%の賃金の支払うことになっていれば、記載内容が一致していますので、そのように支払います。

また、就業規則は、所定超の時間外労働と法定外休日(所定休日)の休日労働に対して、割増賃金を支払うことになっていて(2.と4.)、雇用契約書も同じ内容で記載している場合は、そのように支払います。

勤務時間は1日4時間、出勤日数は週4日と定めて、雇用契約書を交付していたとすると、それが所定労働時間、所定労働日になります。所定労働日でない日が所定休日になります。

就業規則(賃金規程)の記載内容と雇用契約書の記載内容が一致していれば、問題になることは考えにくいです。

就業規則には所定超の時間外労働に対して割増賃金を支払うと記載していて、雇用契約書に法定超の時間外労働に対して割増賃金(所定超の時間外労働は100%)を支払うと記載して、一致していない場合に、問題になりやすいです。

それぞれの割増率が入れ替わったり、休日労働に対する割増率が異なっている場合も同じです。従業員は多く受け取りたい、会社は低く支払いたいと考えて、主張することになります。

結論としては、従業員にとって有利な取扱いが優先して適用されます。一律に、就業規則(賃金規程)又は雇用契約書のどちらが有効かということではありません。

労働契約法(第12条)によって、雇用契約書の労働条件が就業規則の基準に満たない場合は、その部分は無効になって、就業規則の基準を適用することが定められています。

また、雇用契約書によって個別に労働条件を明示したときは、それが契約内容になりますので、就業規則の基準を上回る記載をしていれば、会社はそのように取り扱わないといけません。

労働者保護が優先されますので、結果的に、従業員にとって、就業規則の方が雇用契約書より有利に定められていれば就業規則が、雇用契約書の方が就業規則より有利に定められていれば雇用契約書が適用されます。

お客様には100個から最大200個の質問に回答してもらって、会社の考えを反映した就業規則を作成いたします。パートタイマー用の就業規則の作成も可能です。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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