事業場外労働【協同組合グローブ事件】
協同組合グローブ事件 事件の概要
外国人の技能実習生の受け入れをサポートする監理団体(事業協同組合)に雇用された従業員が、担当する受け入れ企業に訪問指導を行ったり、技能実習生のために、来日時の送迎、生活指導、通訳をしたり、指導員として勤務していました。
従業員は、受け入れ企業に訪問の予約をするなど、自身で業務のスケジュールを管理していました。また、事業協同組合から携帯電話を貸与されていましたが、随時、具体的な指示を受けたり、報告をしたりすることはありませんでした。
従業員の就業時間は午前9時から午後6時まで、休憩時間は正午から午後1時までと定められていましたが、実際の休憩時間は就業日によって異なっていて、自身の判断で直行直帰する日もありました。
従業員は、タイムカードによる労働時間の管理は受けていませんでしたが、月末には、就業日ごとの始業時刻・終業時刻・休憩時間のほか、訪問先・訪問時刻・業務内容等を記入した業務日報を事業協同組合に提出して、その確認を受けていました。
事業協同組合は、事業場外で従事した業務について、事業場外労働のみなし労働時間制を適用して、所定労働時間労働したものとみなして賃金を支払っていました。
これに対して従業員が、労働基準法第38条の2の「労働時間を算定し難いとき」に当たらないと主張して、時間外労働等に対する賃金の支払を求めて、事業協同組合を提訴しました。
協同組合グローブ事件 判決の概要
原審は、次のとおり、賃金の請求を一部認容するべきと判断した。
従業員の業務の性質や内容等から、事業協同組合が従業員の労働時間を把握することは難しいが、事業協同組合は、業務日報で業務の遂行状況等の報告を受けていて、その記載内容について、受け入れ企業等に確認することが可能で、ある程度の正確性を備えていると考えられる。
現に事業協同組合は、業務日報に基づいて従業員の時間外労働の時間を算定して残業手当を支払っている日もあった。これは、業務日報が正確性を備えていることを前提としている。
以上により、労働基準法第38条の2(事業場外労働のみなし労働時間制)の「労働時間を算定し難いとき」には当たらない。
しかし、原審の判断は是認できない。その理由は、次のとおりである。
従業員の業務は、受け入れ企業に対する訪問指導のほか、技能実習生の送迎、生活指導、通訳など、多岐にわたるものであった。
また、従業員は、受け入れ企業に訪問の予約をするなど、自身で業務のスケジュールを管理して、所定の休憩時間と異なる時間に休憩をとること、自身の判断で直行直帰することが許されていたし、随時具体的に指示を受けたり、報告をしたりすることもなかった。
このような状況で、業務の性質、内容、遂行の態様、状況等、業務に関する指示及び報告の方法、内容、実施の態様、状況等を考慮すれば、従業員が担当する受け入れ企業や1ヶ月の訪問指導の頻度等が決まっていたとしても、事業協同組合において、従業員の事業場外の勤務状況を具体的に把握することは困難であったと言える。
しかし、原審は、従業員が事業協同組合に提出していた業務日報について、次の2点により、正確性を備えていると評価した。
- 記載内容について、受け入れ企業等に確認できること
- 事業協同組合自身が、業務日報の正確性を前提にして、時間外労働の時間を算定して残業手当を支払っている日があったこと
そして、労働基準法第38条の2の規定(事業場外労働のみなし労働時間制)の適用を否定した。
しかし、1.については、受け入れ企業等への問い合わせが可能であることを示すだけで、受け入れ企業等に確認するという方法の現実的な可能性や実効性は明らかでない。
2.については、業務日報だけではなく、従業員の労働時間を把握できた場合に限って残業手当を支払っていたと事業協同組合が主張していて、この主張の当否を検討しなければ、事業協同組合が業務日報の正確性を前提としていたとは言えない。また、事業協同組合が一定の場合に残業手当を支払っていたという事実だけで、業務日報の正確性を客観的に示すことにはならない。
以上により、原審は、業務日報の正確性に関する具体的な事情を十分に検討しないで、業務日報のみを重視して、労働基準法第38条の2の「労働時間を算定し難いとき」に当たらないと判断した。労働基準法第38条の2の「労働時間を算定し難いとき」に当たるかどうかについて、更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻す。
解説-事業場外労働
事業場外労働のみなし労働時間制が適用されるかどうか争われた裁判です。事業場外労働のみなし労働時間制は、労働基準法(第38条の2)によって、次のように規定されています。
この事業協同組合では、事業場外労働のみなし労働時間制を適用して、所定労働時間労働したものとみなして、割増賃金を支払っていませんでした。この制度を適用するためには、事業場外で労働しているだけでは不十分で、規定の「労働時間を算定し難いとき」に該当する必要があります。
これについては、阪急トラベルサポート事件(最高裁判決)によって、業務の性質、内容、遂行の態様、状況等、業務に関する指示及び報告の方法、内容、実施の態様、状況等を考慮して判断することが示されました。
この裁判でも同じ考慮要素が示されていて、同じ考え方を受け継いでいます。個々のケースごとに考慮要素に当てはめて、勤務状況(労働時間)を具体的に把握することが困難と認められるかどうかを検討します。業務日報があれば一律に適用できないというものではありません。
原審の高等裁判所では、業務日報の記載内容について、業務の相手方に確認できるから、正確性が備わっている、労働時間を算定できると判断して、事業場外労働のみなし労働時間制の適用を認めませんでした。
しかし、最高裁判所は、それは可能性の話であって、実際に確認できるのか、業務日報が正確かどうか明らかでないという理由から、原審に差し戻すという結論になりました。
一般企業に置き換えて考えると、業務の性質や内容を変えることは難しいと思いますが、業務の遂行方法、指示の方法、報告の方法について、会社が具体的に指示・命令をしていると、適用が否定されやすくなります。
反対に、会社は結果や成果だけを管理することにして、業務の遂行方法を従業員の裁量に委ねていれば、事業場外労働のみなし労働時間制の適用が認められやすくなります。
どちらか曖昧になっているとトラブルになりやすいので、労使間の信頼関係によると思いますが、会社が従業員を管理するのか、従業員に委ねるのか、明確にすることが大事です。
この事業協同組合のケースでも、従業員に委ねることにして、業務日報に労働時間を記載させていなければ、事業場外労働のみなし労働時間制の適用が認められていたと思います。

