労働時間の原則【京都銀行事件】

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京都銀行事件 事件の概要

銀行の就業規則では、始業時刻は8時35分、終業時刻は17時(週初・週末・月末は17時35分)、休憩時間は1時間(11時から14時までの間で交替制)と定めていました。しかし、実際には、

  1. 従業員は8時過ぎに出勤して開店準備等をしていた
  2. 週2回は8時30分から約10分間の朝礼を実施していた
  3. 始業時刻前に開催される融得会議への参加を義務付けられていた
  4. 休憩時間に外出するときは届出と承認が必要であった
  5. 多数の従業員が19時以降も業務に従事していた

ことから、従業員が、1.始業時刻前の準備作業、2.朝礼、3.融得会議、4.昼の休憩時間、5.終業時刻後の残業等が労働時間に該当すると主張して、時間外勤務手当の支払い及び付加金の支払いを求めて、銀行を提訴しました。

京都銀行事件 判決の概要

業務開始の準備作業として、金庫を開いてキャビネットを運び出し、それを各部署が受け取っていたが、金庫の開扉は8時15分以前に行っていたため、従業員は8時過ぎには出勤していた。8時15分から始業時刻までは、黙示の指示による労働時間として、時間外勤務に該当すると認められる。

融得会議については、事実上出席が義務付けられていると認められるから、8時15分以前に会議を開催した日は、その開始時刻以降は時間外勤務に該当すると認められる。

多数の従業員が19時以降も業務に従事して、勤務終了予定時間を記載した予定表を作成していたことから、終業時刻後、少なくとも19時までは銀行の黙示の指示による労働時間として、時間外勤務に該当すると認められる。

また、19時以後の時間帯についても、銀行が時間外勤務を承認し、手当を支払っている場合は、その時間も時間外勤務に該当すると認められる。

付加金については、使用者による労働基準法違反の程度や態様、労働者の受けた不利益の性質や内容、違反に至る経緯、その後の使用者の対応等の諸事情を考慮して、裁判所が支払を命じることができる。

そして、始業時刻前の時間外勤務については、準備行為であるから、時間外勤務の対象としていなかったと推認され、その時間帯の性質上、一概に理由がないとは言えない。

融得会議については、時間外勤務に該当するという扱いに改めたこと、終業時刻後の時間外勤務については、減少しようと努力し、その全てではないが従業員の自主申告分について支払ってきたこと等の諸事情を総合的に考慮すると、本件については、付加金の支払を命じないのが相当であると判断する。

解説-労働時間の原則(1日8時間)

会社から業務命令として具体的に指示をしていない時間が労働時間に該当するかどうか、つまり、時間外勤務手当(割増賃金)の支払い義務があるかどうか、そして、付加金の支払いが認められるかどうか、争われた裁判例です。

所定労働時間に業務に従事している時間は当然、労働時間に該当しますが、その準備のために始業時刻前に行う作業については、会社に利益を生みませんので、労働時間には当たらないと考えて、時間外勤務手当(割増賃金)を支払っていない会社があります。

この銀行もそうでしたが、準備作業は業務に欠かせませんので、黙示の指示があったものとして、準備作業の時間は労働時間に該当することが示されました。準備作業も含めて業務と考えられます。

従業員が自主的に終業時刻後に時間外勤務をしていた時間については、黙示の指示があったものとして、労働時間に該当することが示されました。参加を義務付けている会議や朝礼の時間も労働時間に該当します。

ただし、休憩時間については、自由に使える時間を保障していたとして、労働時間とは認められませんでした。

従業員が実際に作業をしている時間については、黙示の指示があったとして、原則として、労働時間と判断されます。したがって、時間外勤務手当(割増賃金)を支払いたくない場合は、放置していると、会社は黙認していると判断されますので、従業員に帰宅するよう命じる必要があります。

また、付加金については、労働基準法(第114条)で規定されていますが、裁判所の判断で、違法行為が悪質な企業に対して、罰として、不払い賃金と同額の付加金の支払いが命じられます。結果として、2倍の割増賃金を支払うことになります。

付加金の支払いは違反企業に対して一律に命じられるものではなく、個々のケースごとに、労働基準法違反の程度や態様、労働者の受けた不利益の性質や内容、違反に至る経緯、その後の使用者の対応等の諸事情を考慮して、裁判所が判断します。なお、労働基準監督署には付加金の支払いを命じる権限はありません。