懲戒委員会の設置|就業規則の規定例

懲戒委員会の設置

  • 懲戒委員会を設置して、そこで懲戒処分について、審議・決定する方法にしようと思っています。就業規則に記載した方が良いでしょうか?
  • 毎回、懲戒委員会を設置して決定する場合は、就業規則に記載しても構いませんが、省略する可能性がある場合は、就業規則には記載しない方が良いです。

懲戒委員会の設置

懲戒委員会とは

従業員が就業規則の懲戒事由に該当する言動を行ったときは、会社が懲戒処分を行うかどうか、及び、懲戒処分の内容を決定します。

このときに、公正を図るために、懲戒委員会を開催して、複数の委員によって、懲戒処分について、決議をする方法があります。

この懲戒委員会では、本人に弁明の機会を与えたり、関係者から意見を聴取したりして、事実関係の調査や審議を行います。懲罰委員会や賞罰委員会と呼ばれることもあります。

ところで、懲戒については、労働契約法(第15条)によって、次のように規定されています。

懲戒が有効と認められるためには、客観的に合理的な理由があるかどうか、社会通念上相当であるかどうか、が基準になります。

経営者が独断で懲戒処分を決定していると、客観性が乏しくて、恣意的に判断したのではないかと疑念が残りますが、懲戒委員会を開催することで、決定した懲戒処分の客観性が高まります。

懲戒委員会の設置は自由

労働基準法等の法律で、懲戒委員会を設置することは義務付けられていません。設置するかどうかは、会社の判断によります。

しかし、就業規則に、「懲戒処分をするときは懲戒委員会において決定する」という規定を設けたり、就業規則の一部として懲戒委員会規程を作成したりしている場合は、懲戒委員会の開催が義務付けられます。

そして、懲戒委員会の開催が義務付けられているにもかかわらず、開催を怠ったまま懲戒処分を行ったときは、その懲戒処分は無効と判断されます。

懲戒処分が有効と認められるためには、条件の1つとして、手続きが適正であることが求められます。本来、懲戒委員会の設置は自由であるにもかかわらず、会社がそのような規定を設けている場合は、懲戒処分の決定に欠かせない手続きとみなされます。

特に懲戒解雇をするときは、懲戒委員会の開催を省略することは許されません。客観的に懲戒解雇が相当であったとしても、無効と判断されます。

実際にあった裁判例ですが、従業員が刃物で社長の腹を刺して重症を負わせました。それで、会社はその従業員を懲戒解雇したのですが、会社が定めていた手続きを怠ったことを理由として、その懲戒解雇は無効と判断されました。

就業規則の記載は慎重に

懲戒委員会を設置することによって、懲戒処分の合理性が高まるというメリットと、開催を怠ったことによって、懲戒処分が無効になるというリスクを比較すると、メリットよりリスクの方が大きいです。

そのため、毎回、懲戒委員会を開催して決定する場合は、就業規則に記載しても構いませんが、省略する可能性が少しでもある場合は、就業規則には記載しない方が良いです。

重要性を理解した上で就業規則に記載した会社は、当分の間は、問題は生じないでしょう。しかし、経営者が2代目、3代目と引き継いだときに、重要性が認識されないと、リスクが現実になってしまいます。

歴史のある会社の就業規則を見る機会がありますが、正にそのような状態である(就業規則には懲戒委員会を開催する規定があるけれども、実際に懲戒処分をするときに開催していない)という会社が少なくありません。

以上のリスクを理解した上で、就業規則に懲戒委員会を設置する規定を設けるかどうか、慎重に検討してください。

内規で定める

就業規則に定めて従業員に周知すると、懲戒委員会の設置が義務付けられます。

とりあえず、懲戒委員会規程を作成して、就業規則として位置付けるのではなく、内規という位置付けにする方法も考えられます。内規ですので、労働基準監督署には提出しないで、従業員にも周知しません。

内規に、懲戒委員会の構成、審議事項、弁明の機会を与えること等をまとめておきます。こうすれば、懲戒委員会の設置は義務付けられませんので、万一、怠ったとしても問題になることはありません。

一方、内規どおりに懲戒委員会を開催すれば、内規であっても就業規則であっても客観性に違いはありませんので、決定した懲戒処分の合理性は同じように高まります。つまり、就業規則の規定の有無に関係なく、同じ効果が得られます。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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