始末書3回で解雇|就業規則の規定例
始末書3回で解雇
- 始末書を3回提出することになった者は解雇できるようにしたいのですが、就業規則に記載しても良いでしょうか?
- 個別に判断することですが、解雇が有効と認められるケースは少ないと思いますので、就業規則にそのような記載はするべきではありません。
始末書3回で解雇
会社が解雇をする場合は、次の労働契約法(第16条)の規定が適用されます。
要するに、解雇をする場合は、一般常識で考えて、解雇されても仕方がないと認められるような理由が必要ということです。解雇は厳し過ぎると考えられる場合は、解雇は無効になります。
例えば、会社から100万円の現金を横領した従業員については、解雇は仕方がない(=解雇は有効)と判断される可能性が高いです。
「始末書を3回提出することになった者」の適否を考えると、例えば、従業員が遅刻を3回行って、始末書を3回提出したような場合は、通常は解雇は厳し過ぎて認められません。就業規則の解雇事由に定めていたとしても、労働契約法の規定が優先して適用されます。
始末書の提出は、就業規則の懲戒処分の譴責や戒告に基づいて行いますが、譴責や戒告は軽微な違反行為に対して行うものです。通常はその上に、減給、出勤停止、諭旨退職、懲戒解雇があります。
軽微な違反行為を3回行ったとしても、解雇が有効と認められるケースは少ないです。就業規則の解雇事由に「始末書を3回提出したとき」と記載すると、トラブルの原因になりますので、そのような記載はするべきではありません。
ただし、会社は何もできないということではありません。従業員が軽微な違反行為をしたときは、まずは、会社は指導をして、就業規則に基づいて譴責や戒告(始末書の提出)を行います。それでも違反行為を繰り返したときは、就業規則に基づいて減給や出勤停止の重たい懲戒処分を検討します。
懲戒については、労働契約法(第15条)によって、次のように規定されています。
就業規則に基づいて、減給や出勤停止の懲戒処分を行うときは、その懲戒処分が相当かどうか検討する必要があります。なお、会社が指導をしても、本人は反省しないで、改善する見込みがなければ、重い懲戒処分は認められやすくなります。
また、従業員が違反行為をしたときは、その都度、会社が指導・注意をすることが重要です。会社が指導・注意を怠っていると、従業員から「その行為は黙認されていた」「違反行為とは知らなかった」と主張される恐れがあります。
譴責・戒告(始末書の提出)をして、減給や出勤停止を挟んでおけば、次は諭旨退職や懲戒解雇と本人に警告を与えることができます。譴責や戒告(始末書の提出)からいきなり懲戒解雇は処分の格差が大き過ぎて、会社の指導が不十分と指摘される恐れがあります。
同じ違反行為を何回も繰り返す場合を想定して、キノシタ社会保険労務士事務所が作成する就業規則では、懲戒解雇の事由として、「懲戒処分を再三にわたって受けたにもかかわらず、なお改善の見込みがないとき」と記載しています。
会社が指導・注意をしても、違反行為を繰り返すような者については、他の懲戒事由に該当するケースがあると思います。その場合は、その違反行為に対して懲戒処分を検討することになります。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。