懲戒処分の制限|就業規則の規定例

懲戒処分の制限

  • 不祥事が発覚したときに、「6ヶ月間停職させる」、「3ヶ月間報酬を2割減額する」というような報道を見掛けることがありますが、これらと比べると、当社の就業規則の懲戒処分は緩いようです。もっと厳しい内容に変更できますか?
  • 会社が行う懲戒処分については、一定の制限があります。就業規則の内容も、その制限の範囲内にしておく必要があります。

停職(出勤停止)

まず、「停職」というのは公務員に対して使われる言葉で、一般企業における「出勤停止」と同じものです。なお、停職(出勤停止)とは、一定期間出勤させないで、その間の賃金を支払わないという懲戒処分の1つです。

そして、質問の「6ヶ月間の停職」という報道については、公務員に対する処分と思われます。国家公務員については、国家公務員法により、停職の期間は1年以内で定めることとされています。

一方、会社の従業員については、労働基準法が適用されるのですが、労働基準法では出勤停止の期間に関する規定はありません。

ただし、労働基準法の前身となる工場法では、出勤停止の期間は7日を限度とするという通達が出されていました。現在でもこの名残でしょうか、出勤停止の期間は1週間以内や2週間以内としている就業規則が大半です。

就業規則で出勤停止の期間を2週間以内と定めている場合は、2週間を超える期間の出勤停止処分を科すことはできません。また、就業規則で出勤停止の期間を1年以内と定めたとしても、違反行為と懲戒処分の程度が釣り合っていないと無効と判断されます。

公務員の場合は認められるとしても、一般企業では1年間や半年間という長期間の出勤停止は恐らく認められないでしょう。出勤停止の期間は、長くても2週間とするようお勧めいたします。

もし、1週間や2週間の出勤停止では収まらない程度の悪質な違反であれば、諭旨退職を検討する方が現実的と思います。もちろん、懲戒処分の1つとして、就業規則に諭旨退職の規定を設けている必要があります。

減給

次に、減給についても、公務員と会社の従業員では、取り扱いが異なります。

国家公務員については、人事院規則により、減給として、賃金月額の5分の1以下の金額を1年以下の期間、減額することが定められています。このため、公務員が何か不祥事を起こしたときに、賃金月額の2割を3ヶ月間カットすることは十分あり得ることです。

一方、労働基準法では、制裁規定の制限として、次のように定められています。

「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」

要するに、1回の違反行為に対して減給できるのは、平均賃金の日額の半額までです。そして、違反行為が複数回あったときでも、減給できるのは、賃金月額の10分の1までとされています。

したがって、会社の従業員については、賃金月額の2割を3ヶ月間カットするようなことはできません。もし、就業規則で定めていたとしても、労働基準法の方が優先されますので、法律違反として無効になります。

ところで、一般企業でも、3ヶ月間報酬を2割減額するというような報道がありますが、これは役員が自主的に報酬を返上しているものです。役員には労働基準法や就業規則が適用されませんので、このようなことが可能になります。

不祥事を起こして厳しい処分を受けることが報道されているときに、よく見ると、会社の従業員ではなく、公務員や役員が対象になっていることが確認できると思います。

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