無断欠勤7日で懲戒解雇|就業規則の規定例
無断欠勤7日で懲戒解雇
- 無断欠勤が7日になったときは、懲戒解雇できるようにしたいのですが、就業規則に規定することは可能でしょうか?
- 無断欠勤が2週間以上になったときは、通常は懲戒解雇をしても認められますが、7日となると短くて認められない可能性があります。規定するべきではないと思います。
解雇の正当な理由
労働契約法により、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。
要するに、解雇をするときは、解雇されても仕方がないと世間一般的に認められるような正当な理由が必要ということです。
非常に抽象的で、従業員がどの程度のことをすれば解雇が認められるのかという具体的な判断基準は、労働契約法や労働基準法では定められていません。
解雇の正当性の有無について、会社と従業員の間で見解が異なる場合は、最終的には裁判によって、様々な事情を総合的に考慮して判断されることになります。
解雇予告の除外認定
労働契約法や労働基準法においては、解雇の具体的な判断基準は定められていませんが、通達により、正当な解雇事由として、いくつか挙げられているものがあります。
労働基準法により、解雇をするときは、解雇予告を行うこと(30日以上前に解雇の予告をすること、又は、平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払うこと)が義務付けられています。ただし、従業員の責めに帰すべき事由によって解雇をして、労働基準監督署の認定が受けられた場合は、解雇予告の手続きが除外されることになっています。
本来は、急に解雇されると従業員の生活に支障が生じますので、会社が30日分の時間的な猶予、又は、金銭的な猶予を与えることになっているのですが、横領など自身の責任によって解雇されたときは、そのような猶予を会社が負担する必要はないという趣旨です。
就業規則にも規定していると思いますので確認してください。それで、この解雇予告の除外認定を受けられる事例として、通達により、次のケースが列挙されています。
- 会社内における盗取、横領、傷害等の刑法犯に該当する行為があったとき
- 賭博や風紀を乱す行為により職場規律を乱し、他の従業員に悪影響を及ぼすとき
- 雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称したとき
- 他の会社へ転職したとき
- 原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じないとき
- 遅刻や欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めないとき
これらのケースに該当するものについては、行政が示したものですので、従業員の責めに帰すべき事由として、通常は懲戒解雇をしても認められます。このことから、よくある就業規則の雛形でも、2週間以上の無断欠勤については、懲戒解雇の事由として定められています。就業規則の懲戒解雇の事由に、これらが全部記載されていることを確認してください。
無断欠勤の日数と懲戒解雇
5.のとおり、2週間以上の無断欠勤があったときは、通常は懲戒解雇が認められます。
これから推測すると、無断欠勤が1日減って13日になったときは、懲戒解雇が認められる可能性は高いと言えます。しかし、無断欠勤が1日だけのときは、懲戒解雇が認められる可能性はゼロに近いでしょう。無断欠勤が7日となると、一概に認められるとも認められないとも言えません。
これまでにも無断欠勤や遅刻を繰り返していたか、会社は注意や指導をしてきたか、無断欠勤により会社の業務にどのような支障か生じたのか、どのような理由で無断欠勤したのか、会社に届け出られない事情があったのか、無断欠勤をしたときは解雇に応じるという誓約書を採用時に提出させていたか等、様々な事情を総合的に考慮して判断されます。
このため、就業規則に懲戒解雇の事由として、「無断欠勤が7日になったとき」と一律に規定をしても、認められたり、認められなかったりしますので、就業規則に規定することは相応しくないと思います。結果的に、「無断欠勤が2週間以上に及んだとき」とするのが最も確実な方法です。
また、本題から外れますが、「無断欠勤が7日になったとき」となっていると、連続して7日なのか、通算して7日なのか、また、通算する場合はどの期間内で通算するのか、解釈の仕方によって違ってきます。
更に、暦日で7日(1週間)なのか、所定の労働日数(欠勤日数)をカウントして7日なのかも明確にする必要があります。会社と従業員の間で思い違いが生じると、トラブルの元になります。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。