7日の無断欠勤で懲戒解雇|就業規則の規定例
7日の無断欠勤で懲戒解雇
- 無断欠勤が7日に達した従業員については、懲戒解雇したいと考えています。就業規則に規定しても良いでしょうか?
- 無断欠勤が2週間に達した従業員については、通常は懲戒解雇が認められます。7日は短過ぎて認められない可能性がありますので、特別な事情がなければ、2週間とした方が無難です。
7日の無断欠勤で懲戒解雇
労働契約法の規定
労働契約法(第16条)によって、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。
解雇するときは、客観的に合理的な理由が必要で、一般常識で考えて解雇されても仕方がないと認められるケースでないといけません。
抽象的で、どの程度の理由があれば解雇が認められるのかという具体的な基準は、労働契約法や労働基準法では定められていません。
解雇が有効か無効か、会社と従業員の意見が対立した場合は、最終的には裁判によって、様々な事情を考慮して判断されます。
解雇予告の除外認定
労働契約法や労働基準法の法律上で、解雇の具体的な判断基準は定められていませんが、解雇予告の除外認定に関する通達によって、正当な解雇事由として認められるケースが列挙されています。
労働基準法(第20条)によって、従業員を解雇しようとする場合は、30日以上前に解雇の予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが義務付けられています。
ただし、「労働者の責に帰すべき事由」に基づいて解雇をして、労働基準監督署の認定を受けた場合は、解雇予告の手続きを省略できます。この認定のことを、解雇予告の除外認定と言います。
通常は、急に解雇された従業員は生活に支障が生じますので、30日の時間的な猶予、又は、30日分の金銭的な猶予を与えることになっています。しかし、重大又は悪質な違反行為をして解雇された者については、そのような猶予を与えて保護する必要はないという趣旨です。
そして、この解雇予告の除外認定を受けられる事例(「労働者の責に帰すべき事由」)として、通達によって、次の事項が列挙されています。
- 社内で盗取、横領、傷害等の刑法犯に該当する行為をしたとき
- 風紀を乱す行為により職場の規律を乱して、他の従業員に悪影響を及ぼすとき
- 採用面接等で合否の条件となるような経歴を詐称したとき
- 他の会社に転職したとき
- 原則として2週間以上、正当な理由がなく無断欠勤をして、出勤の督促に応じないとき
- 頻繁に遅刻や欠勤をして、繰り返し注意をしても改めないとき
これに該当する者については、公的に保護する必要がないことが示されていますので、特別な事情がない限り、会社が懲戒解雇をしても有効と認められます。
無断欠勤の日数と懲戒解雇
5.のとおり、2週間以上無断欠勤をして、会社が出勤の督促をしても応じない従業員については、懲戒解雇が認められます。
2週間は14日ですので、これを基準に考えると、13日の無断欠勤をした従業員については、懲戒解雇が認められる可能性はかなり高いと言えます。しかし、1日だけ無断欠勤をした従業員については、懲戒解雇が認められる可能性はゼロに近いでしょう。
半分の7日の無断欠勤をした従業員については、50%に近い確率で判断が分かれるように思います。
過去に無断欠勤を繰り返していたか、会社は注意や指導を繰り返し行っていたか、無断欠勤によって業務にどのような支障か生じたのか、どのような理由で無断欠勤をしたのか、会社に連絡できない事情があったのか、無断欠勤をしたときは解雇に応じる旨の誓約書を提出していたか、その他の様々な事情を総合的に考慮して、個別の事案ごとに判断されます。
つまり、懲戒解雇が有効と認められる可能性がありますが、無効と判断される可能性もあります。
もし、無効と判断されると、懲戒解雇をした時点にさかのぼって賃金を支払って、在籍することになります。就業規則の懲戒解雇の事由を「無断欠勤が7日以上に及んだとき」と規定すると、大きなリスクを伴います。
そこまでのリスクを受け入れて、7日の無断欠勤に拘るのであれば、経営判断として尊重しますが、そうでなければ、100%に近い確率で認められますので、就業規則の懲戒解雇の事由としては、「無断欠勤が2週間以上に及んだとき」とした方が良いです。
ところで、本題から外れますが、「無断欠勤が7日以上に及んだとき」と規定していると、無断欠勤が連続して7日なのか、一定期間を通算して欠勤した日数が7日なのか、曖昧でトラブルの原因になります。
また、連続としても、暦日で7日(1週間)なのか、欠勤した日数(休日を含まない所定労働日数)で7日なのか、会社が想定している内容と異なる解釈をされないように、明確に定める必要があります。問題が大きくなると、労働者保護が優先されて、従業員の主張が通りやすいです。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。