退職事由の分類|就業規則の規定例

退職事由の分類

  • 退職が成立する事由として、どのようなケースがありますか?
  • 解雇以外の事由で離職(労働契約を解約)するケースで、いくつかに分類されます。会社の実態に合わせて、退職事由として就業規則に規定してください。

退職事由の分類

解雇と退職の違い

会社と従業員は、労働契約の関係にあります。

解雇とは、会社の都合で、一方的に労働契約を解約する(離職させる)ことを言います。解雇に該当すると、労働基準法によって解雇の予告が義務付けられたり、労働契約法によって正当な解雇理由が求められたりして、会社に対して様々な制約があります。

解雇以外の事由で離職(労働契約を解約)するケースは退職に該当して、いくつかに分類されます。

自己都合退職

従業員の都合で、一方的に労働契約を解約する(離職する)ことを自己都合退職と言います。「一身上の都合により、・・・」と記載した退職届を会社に提出して、退職するものです。

依願退職、任意退職、辞職と言う場合があります。なお、民法によって、期間を定めないで雇用している場合は、退職日の2週間以上前に会社に申し出れば、退職できることが定められています。

合意退職

一方のみの意思表示で行うものではなく、会社と従業員が話し合って合意して、労働契約を解約する場合があります。これを合意退職と言います。

会社から退職勧奨を行ったり、希望退職を募集したりして、従業員がそれに応じて、退職するケースが合意退職に当たります。また、懲戒処分の1つである諭旨退職を行って、従業員がそれに応じて退職する場合も合意退職に該当します。

退職届を提出したり、退職確認書を作成したりして、従業員の退職の意思が明らかになっていれば、解雇に該当しませんので、解雇に関するトラブルを防止できます。解雇の予告も不要です。

その他にも、就業規則で定めている退職事由に該当したときは、自動的に退職(労働契約の解約)が成立します。就業規則を作成していない会社については、採用時に交付する雇用契約書や労働条件通知書に、退職事由を明示する必要があります。

定年

一定の定年年齢に達したときに、自動的に退職となります。定年を設ける場合は、高年齢者雇用安定法によって、定年年齢は60歳以上とすることが義務付けられていて本人が希望する場合は65歳まで継続して雇用する必要があります

契約期間の満了

1年など、期間を定めて雇用した者について、その契約期間が満了したときは、原則として、自動的に退職することになります。“雇い止め”と言うこともあります。

死亡

労働契約の当事者である従業員が死亡したときは、当然、労働契約は解消して、退職の手続きを進めることになります。

休職期間の満了

休職制度がある会社において、休職事由に該当して、休職期間が満了しても復職できない者については、自動的に退職することになります。

休職期間の満了を、就業規則の退職事由として定めている場合は、退職の処理を行います。休職期間の満了を、解雇事由として定めている就業規則を見掛けることがありますが、その場合は、従業員から解雇として処理するよう求められます。

役員就任

従業員が会社の役員に就任したときは、従業員の身分を失いますので、従業員としては退職することになります。ただし、兼務役員に就任して、役員と従業員の両方を兼務する場合は、退職扱いにはなりません。

行方不明

このようなケースを退職事由として定めている就業規則は少ないですが、従業員が行方不明になった場合に、一定期間が経過したことを退職の意思表示とみなして、退職の処理をするものです。

なお、この場合の一定期間については、労働基準法によって、解雇予告の期間が30日と定められていることから、バランスを考慮すると、少なくても30日(1ヶ月)は必要と考えられます。短過ぎると、退職の処理が無効と判断される可能性があります。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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