定年退職(再雇用)後の賃金の減額|就業規則の規定例
定年退職(再雇用)後の賃金の減額
- 従業員が60歳の定年になって再雇用する場合は、賃金を60%程度に減額したいと考えています。就業規則に、「60歳以降の賃金は、60歳になる前の賃金の60%に減額する」といった記載をしても良いでしょうか?
- 就業規則にそのような記載があると、トラブルの原因になりかねませんので、記載しない方が良いと思います。
定年退職(再雇用)後の賃金の減額
就業規則は、従業員に共通の労働条件やルールを定めたものです。
そして、雇用契約の期間、就業場所、業務内容、労働時間、賃金等の具体的な労働条件については、労働基準法(第15条)によって、採用時に雇用契約書や労働条件通知書を交付して、本人に明示することが義務付けられています。
就業規則(賃金規程)には、賃金の決定方法を記載することになっていますが、賃金の額は会社が従業員ごとに決定するものです。
就業規則に、「60歳以降の賃金は、60歳になる前の賃金の60%に減額する」という規定があると、これに拘束されてしまいます。
例えば、定年後に代替要員がいない業務に従事していた従業員については、定年後も業務内容や労働時間等を変更しないで、そのまま勤務を継続して欲しい場合があると思います。
業務内容や労働時間等が同じ場合に、就業規則に規定しているからと言って、会社が賃金額を引き下げようとしても、従業員は納得できません。業務内容や労働時間等が同じ場合は、賃金額は維持するべきです。
なお、就業規則に記載している内容より、従業員にとって有利に取り扱うことは可能です。就業規則に賃金額を60%に減額すると記載している場合に、賃金額を100%支給して減額しない取扱いは可能です。
そもそも、定年退職した後に再雇用するという行為は、形式上は、一旦退職して新しく採用するものですので、通常の新規採用と同様に、賃金額をいくらにするかは、原則的には会社の判断で自由に決定できます。
つまり、就業規則に、「60歳以降の賃金は、60歳になる前の賃金の60%に減額する」という規定がなくても、個々の従業員の業務内容や労働時間等を考慮して、その都度、会社の判断で決定できます。
その都度の状況によって、60%に減額するのが相応しい者がいるでしょうし、80%に減額するのが相応しい者もいるでしょう。出勤日数や労働時間を半分に減らしたいと考える者もいるかもしれません
就業規則に賃金額を60%に減額すると規定していると、短絡的に考えてトラブルが生じる恐れがあるというデメリットがあるだけで、会社にとって特にメリットはないと思います。
したがって、定年退職後の賃金の額を会社が自由に決定できるようにしたい場合は、賃金の額について、就業規則には具体的な記載はしない方が良いです。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。