退職の許可・承認|就業規則の規定例
退職の許可・承認
- 急に退職されると業務に支障が生じますので、就業規則に、従業員が退職するときは会社の許可や承認が必要というような規定を設けたいのですが...?
- そのような内容を就業規則に記載することはできません。
退職の許可・承認
従業員の退職については、民法において、次のように定められています。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」
要するに、従業員は、2週間前に申し出れば退職できるということです。「いつでも」というのは、「特別な理由がなくても」という意味ですので、会社の許可や承認がなくても退職できることになります。
ところで、民法上は、当事者のもう一方である会社も、2週間前に申し出れば解雇できることになっているのですが、労働基準法により、会社が従業員を解雇するときは30日以上前に予告をすることが義務付けられています。
民法(一般法)より労働基準法(特別法)の方が優先されますので、就業規則にも、解雇をするときは30日以上前に予告をすることが記載されていると思います。
話を戻しますと、従業員が2週間以上先の日を指定して、退職を申し出たときは、会社はそれを受け入れないといけません。もし、会社が従業員の申出を拒否すると違法になってしまいます。
昔は強制労働が広く行われていたことから、今は退職の自由が法律で保障されています。就業規則や雇用契約書等で、会社の許可や承認を得るよう規定したとしても無効になります。従業員の退職の自由を制限するような取決めは認められません。
そもそも、許可や承認を義務付けられると仮定すると、会社は退職の申出をずっと認めないで、永久に働かせ続けることが可能になります。そう考えると、許可や承認を義務付けることは無理があると理解できると思います。
ただし、「当事者が雇用の期間を定めなかったとき」とあるように、期間を定めないで雇用をしたときは以上のとおりですが、1年契約や半年契約など、期間を定めて雇用をしたときは、その期間が満了するまで、従業員は勤務をする義務があります。
この場合は、契約期間の途中で、従業員が退職したいと申し出たとしても、法律的には、会社は退職を認めないことができます。ただし、辞めたいと思っている従業員を雇用し続けてもマイナス面が大きいので、そのまま退職を認めるケースが多いと思います。
また、民法上は“2週間”と定められていますが、「従業員が退職をするときは“1ヶ月”以上前に申し出なければならない」と規定している就業規則が結構あります。私も、就業規則を作成するときは、これを標準としています。
この場合、民法の規定を任意規定と位置付けて、就業規則の特約が認められるとする見解があります。しかし、反対に、認められないとする見解もあり、現状では考え方が統一されていません。
したがって、就業規則には、1ヶ月以上前に申し出るよう規定しておいて、この規定は会社からの要望と位置付けて、強制しない(1ヶ月以上前でなくても2週間以上前であれば不問にする)取扱いが望ましいと思います。
急に退職されると業務に支障が生じる場合は、就業規則で対処しようとするのではなく、定期的に配置転換をしたり、従業員の担当をローテーションしたりして、1人が抜けても別の者が処理できるような工夫をすることが大事です。特定の人にしかできない業務があることは、会社にとって大きなリスクであることを認識するべきでしょう。
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