退職後の守秘義務|就業規則の規定例
退職後の守秘義務
- 従業員が会社を退職した後も、営業秘密に関して守秘義務を課すことはできますか?
- 在籍中に、会社が適切に営業秘密を管理していれば可能です。就業規則を作成して、守秘義務があることを明示することが望ましいです。
営業秘密の管理
顧客リストや仕入先リスト、取引条件、製造方法等の情報は、会社の従業員が試行錯誤をしながら作り上げたもので、会社にとっては大切な財産です。そのため、これらは営業秘密として、不正競争防止法によって保護されています。
しかし、会社にとって大事な情報であっても、その情報が適切に管理されていなければ、不正競争防止法による保護が受けられません。不正競争防止法上の「営業秘密」と認められるためには、次の3つの条件を全て満たしている必要があります。
- 秘密として管理されていること
- 事業活動に有用な情報であること
- 公然と知られていないこと
そして、営業秘密を不正に使用したり、開示(漏洩)したりしたときは、法律で禁止されている行為として、会社は違反をした者に対して、損害賠償を請求できます。
退職後の守秘義務
違反行為をした(元)従業員に損害賠償を請求するとしても、時間が掛かる上に、実際の損害の範囲内しか請求できません。損害賠償を請求することを考えると、営業秘密の漏洩を防止することを第一に考えるべきです。
(元)従業員が、「退職したから関係ない」「この程度なら問題ない」と安易に考えて、営業秘密を漏洩するケースがあります。退職後も守秘義務があることを従業員に周知するために、就業規則を作成して、次の内容を記載すると良いでしょう。
- 退職又は解雇された後も守秘義務があること
- 守秘義務に違反した場合は損害賠償を請求すること
会社の従業員としての自覚を促して、会社は営業秘密の漏洩を許さないという意思を伝えるためにも重要です。
そして、退職や解雇をする際は、就業規則の規定を本人に明示して、確認してください。同時に、採用時に本人が会社に提出した誓約書を相互に確認することも重要です。
誓約書を作成していなかったり、誓約書に守秘義務に関する記載がない場合は、見直した方が良いと思います。
退職や解雇の際に、誓約書の提出を求めることがありますが、退職金の増額など、従業員にメリットがないと、提出を拒否される可能性が高いです。したがって、誓約書は、採用時や昇進時、プロジェクトの参加時に提出を求めるのが良いと思います。
また、中途採用をする場合は、その者が前に在籍していた会社で守秘義務が課されていることがありますので、守秘義務の有無やその概要を確認する必要があります。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。