1年単位の変形労働時間制の導入条件|就業規則の規定例
1年単位の変形労働時間制を採用できる条件
- 1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、就業規則に規定すればいいのでしょうか?
- 就業規則に1年単位の変形労働時間制に関する記載をした上で、労使協定を締結して、労使協定を労働基準監督署に届け出る必要があります。
就業規則の規定
労働基準法(第89条)によって、従業員数が10人以上の会社は就業規則の作成が義務付けられていて、「始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項」が就業規則に記載しなければならない事項の1つとして挙げられています。
1年単位の変形労働時間制はこれに該当しますので、就業規則に、その取り扱いやルールについて、記載する必要があります。
また、労働基準法施行規則によって、1年間の起算日を就業規則又は労使協定に記載することが定められています。
1年単位の変形労働時間制の就業規則の規定例は、次のようになります。
第○条(1年単位の変形労働時間制)
- 労使協定を締結の上、毎年4月1日を起算日とする1年単位の変形労働時間制を採用することがある。
- 所定労働時間は、1年を平均して1週40時間以内とする。
- 所定労働日及び始業・終業の時刻は、原則として毎年2月末日までに年間カレンダーによって明示する。
就業規則に記載する内容はシンプルですが、具体的な取り扱いは労使協定で定めることになります。
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労使協定の締結
労働基準法(第32条の4)によって、1年単位の変形労働時間制について、次のように規定されています。
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第32条の規定にかかわらず、その協定で第2号の対象期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、当該協定で定めるところにより、特定された週において同条第1項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。
従業員の過半数代表者(又は過半数労働組合)と労使協定を締結して、1年間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない定めをしたときは、1年単位の変形労働時間制を適用できます。
これによって、その範囲内で労働時間を特定していれば、1週40時間を超える週、又は、1日8時間を超える日があったとしても、割増賃金の支払いが不要になります。
また、労働基準法(第32条の4)で、労使協定で定めなければならない事項が列挙されています。最初は労使協定を作成するのに戸惑うかもしれませんが、2回目以降は日付を変更するだけですので簡単です。
労使協定の届出
1年単位の変形労働時間制の労使協定は、作成して従業員の過半数代表者と締結するだけでは不十分です。労働基準法(第32条の4第4項)によって、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。
1年単位の変形労働時間制を採用する場合の条件として定められているものですので、労働基準監督署に労使協定を届け出ていない場合は、1年単位の変形労働時間制を適用できません。
その場合は結果的に、原則的な労働時間のルールが適用されます。つまり、1日8時間、1週40時間が労働時間の上限になって、これを超えた時間に対して、割増賃金の支払いが義務付けられます。
1年単位の変形労働時間制の労使協定は、自動更新ができませんので、毎年、届け出ないといけません。36協定(時間外・休日労働の労使協定)も同じですので、毎年、一緒に届け出ることを忘れないようにしてください。
なお、1ヶ月単位の変形労働時間制については、就業規則に1ヶ月単位の変形労働時間制に関する記載をすれば適用できます。労使協定の締結と届出は不要ですので、1年単位の変形労働時間制よりは手間が少ないです。
執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。