代休の記載|就業規則の規定例

代休の記載

  • 就業規則に、代休に関する記載はなくても良いのでしょうか?
  • 記載しても構いませんが、休日労働と欠勤控除の規定があれば、特別に代休の規定は設けなくても差し支えはありません。

代休の記載

「代休」と「休日の振替」を区別していない会社がありますが、法律的には異なります。まずは、この違いを理解しておく必要があります。

休日の振替とは、予め定めていた休日と労働日を入れ替える制度です。例えば、1日が休日、2日が労働日としている場合に、それぞれ入れ替えると、1日が労働日、2日が休日になります。その結果、1日の労働日に出勤をして、2日の休日に休むことになります。

休日の振替は労働条件の変更ですので、原則的には、個別に従業員から同意を得る必要があります。ただし、休日の振替について、就業規則に規定していれば、予め同意していることになりますので、その都度、従業員から同意を得る必要はありません。

代休とは、従業員が休日勤務をして、その代償として“労働日”に休むという制度です。代休は、次の2つの処理の組合せによって成立します。

  1. 休日勤務を行う(休日勤務手当を支払う)
  2. 代休を取る(欠勤扱いで賃金を減額する)

休日の振替は、就業規則に記載していないと会社が一方的に命じることはできません。しかし、就業規則に休日勤務と欠勤控除の規定があれば、代休が成立しますので、特別に代休に関する記載がなくても対応できます。

なお、会社に代休制度があること、会社が代休の取得を命じられることを明確にするために、就業規則に代休に関する記載をするケースがあります。その場合の規定例は、次のとおりです。

  1. 会社は休日労働をした従業員に対して、代休を与えることがある。
  2. 前項の代休は1日単位で与えることとし、従業員に指定して通知する。

代休と割増賃金の支払い

代休を与えたとしても、休日勤務が帳消しになることはありません。1.の休日勤務が法定休日の場合は、135%の休日勤務手当を支払う必要があります。

1.の休日勤務が法定休日でない場合は、125%の時間外勤務手当を支払う必要があります。ただし、法定労働時間(1週40時間)を超えない場合は、100%の通常の賃金で構いません。

そして、2.で代休を取得した日の賃金について、減額できるのは欠勤控除と同じ1日分(100%分)ですので、35%又は25%の割増分は支払う義務があります。割増分は相殺できません。

一方、法定休日を確保して休日を振り替えた場合は、休日勤務手当を支払う義務はありません。なお、4週4休制を採用することを就業規則に規定している場合は、4週4休制を採用できます。

ただし、休日を振り替えて、法定労働時間(1週40時間)を超えた場合は、25%の時間外勤務手当を支払う必要があります。100%の部分は通常の賃金に含まれますので、追加(重複)して支払う必要はありません。

したがって、法定休日を同じ週内で振り替えたときは、法定休日を確保して、1週40時間以内のままですので、割増賃金(休日勤務手当及び時間外勤務手当)の支払い義務は生じません。

通常は、休日の振替を利用した方が、会社は割増賃金の支払いを抑えられます。

また、代休を与えることを前提にして、休日勤務をさせている会社の中には、代休を取得しないまま数ヶ月繰り越して、取得するべき代休が何日も溜まっている従業員がいることがあります。労働基準法上は賃金の未払いとして、労働基準監督署から是正勧告を受ける恐れがあります。

予め労働日と休日を特定して振り替えることをルールにすれば、休みが取れないまま溜まることを防止できます。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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