残業命令と就業規則|就業規則の規定例

残業命令と就業規則

  • 残業を嫌がる従業員がいるのですが、会社は残業を強制できますか?
  • 就業規則に、「時間外労働を命じることがある」のような規定があれば、会社は従業員に残業を命じて強制することができます。

残業命令と就業規則

労働基準法(第15条)によって、従業員を採用するときは、労働時間や休日など、一定の労働条件について、書面を交付して、本人に明示することが義務付けられています。

そのため、会社は雇用契約書や労働条件通知書を作成して、その中で、「始業時刻は9時、終業時刻は18時、休憩時間は12時から13時まで、休日は土・日・祝日」のように、所定の労働時間と所定の休日(労働日)を定めていると思います。

これを超える時間や休日に勤務してもらうためには、その根拠が必要です。

雇用契約書は個別の契約内容を定めたものですが、就業規則も従業員共通の契約内容を定めたものとして、効力があります。

そして、就業規則に「時間外労働及び休日労働をさせることがある」という記載があれば、労働契約の内容として、従業員は同意していることになります。

会社はこの規定を根拠にして、時間外労働や休日労働(残業や休日出勤)を命じることができます。従業員は応じる義務があって、残業命令や休日出勤命令を拒否することは、業務命令違反として、懲戒処分の対象になり得ます。

就業規則に、残業命令や休日出勤命令の根拠となるような記載がなければ、強制や命令はできません。その場合は、その都度、従業員から同意を得る必要があります。従業員が拒否をしたときは、強制できません。

普通の就業規則には記載があると思いますが、念のため、残業命令や休日出勤命令の根拠となるような記載があることを確認してください。

また、根拠となる記載があったとしても、採用時に時間外労働や休日労働(残業や休日出勤)がないことを条件にして採用した従業員については、採用時の約束の方が有効になります

雇用契約書や労働条件通知書に、「所定外労働の有無」の欄があって、時間外労働や休日労働をそれぞれ「無」として交付している場合が、これに該当します。

その場合に、事情があって、時間外労働や休日労働の必要が生じたときは、その都度、個別に同意を得る必要があります。強制はできませんので、拒否したとしても、懲戒処分は行えません(無効になります)。

更に、1週40時間、1日8時間を超える時間外労働をさせる場合は、労働基準法によって、従業員の過半数代表者と36協定を締結して、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。

36協定を届け出ていないと、1週40時間、1日8時間を超える時間外労働は、労働基準法違反になります。法律違反となる業務命令は無効ですので、そのような残業命令は無効になります。

また、育児介護休業法によって、育児や介護をする従業員が要件を満たしている場合は、所定外労働(残業)の免除を請求することができます。その請求をした者については、原則的には、所定外労働(残業)をさせることはできません。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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