労災保険と損害賠償
労災保険と損害賠償
労働基準法 第84条第2項
使用者は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。
【労災保険と損害賠償】の解説です
労災保険から給付が行われた場合を含めて、会社が補償を行った場合は、同一事由について会社は損害賠償の責任を免れます。
会社が補償をしたら、もう責任がないということ?
例えば、現実の損害額が100万円で、労災保険から80万円の給付が行われたとします。
20万円の差があるね。
その場合に、会社に100%の損害賠償責任があったとすると、80万円は支払ったものとみなして、20万円の支払い義務があるということです。
損害については100%の補償を受けられるけど、それ以上は請求できないということね。
仮に、従業員が労災保険から80万円を受給して、それとは別に会社から損害額の100万円を受け取ると、重複して補償されることになりますので、妥当ではありません。
ケガをして、治療費や休業補償が2倍で支給されるのは、制度の趣旨に照らし合わせるとおかしい。会社が支払うことはない?
労働基準法や労災保険法では財産上の損害が補填されるのですが、精神的な損害の補填はありません。
財産上の損害は治療費とか休業補償というのは分かるけど、精神的な損害というのは?
慰謝料です。
慰謝料は請求できるんだ?
はい。労災保険の給付を受けていても、慰謝料は請求できます。
実際に従業員が損害賠償を請求することはあるの?
過労死で遺族が請求するケースはよくあります。
過労死で1億円の損害賠償が認められたと聞いたことがある。
遺族補償は平均賃金の1,000日分ですので、その差額を会社が支払わないといけません。平均賃金が1万円とすると、差額は9000万円になります。
「労災保険と損害賠償」に関する裁判例
「労災保険と損害賠償」に関して、次のような裁判例があります。
青木鉛鉄事件(損害賠償から控除できる範囲)
コック食品事件(特別支給金)