労働基準法等の周知義務【朝日新聞社事件】

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朝日新聞社事件 事件の概要

違法な争議行為を行ったことを理由として、会社は就業規則に基づいて、従業員を解雇しました。

解雇された従業員が、就業規則は労働基準法第106条で定められている周知方法がなされていなかったため無効であり、また、この就業規則に基づいた解雇も無効であると主張して、訴訟を提起しました。

朝日新聞社事件 判決の概要

労働基準法第106条第1項で定められている周知の方法を欠いていたとしても、この就業規則は、従業員にその意見を求めるために提示され、かつ、その意見書が添付されて届け出されたものである。

その後に、会社において、労働基準法第106条第1項で定められている周知の方法を欠いていたとしても、労働基準法第120条第1号の罰則を適用するかどうかは別の問題として、この就業規則自体の効力を否定する理由にはならない。

就業規則は、会社が従業員との労働関係を規律するために制定するもので、法令又は労働協約に違反する内容でない限り、従業員の承認を必要としないで、会社が一方的に作成することができる。

そして、従業員の意見を聴いて、その意見書を添付して労働基準監督署に届け出ることを要する。

本件就業規則は以上の要件を実行しているものであり、本件就業規則を適用して行った解雇は正当である。

解説−労働基準法等の周知義務

労働基準法第106条第1項により、次の方法によって、就業規則を従業員に周知することが定められています。

  1. 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
  2. 書面を交付すること
  3. その他の厚生労働省令で定める方法

この裁判では、労働基準法第106条第1項で定めている周知方法を欠いていたとしても、従業員の意見を聴くために就業規則を提示して、その意見書を添付して労働基準監督署に届け出ていたことから、就業規則の効力を否定する理由にはならないと判断しました。

就業規則の周知を怠っていても、就業規則の効力が認められましたが、「就業規則の周知はしなくても良い」と考えるのは間違いです。

従業員に就業規則を周知したり、提示したり、全く何もしていなければ、従業員は就業規則の内容を知ることができませんので、就業規則を守ることは不可能です。そのような場合は、就業規則の効力は否定されると考えられます。

また、万一、就業規則の効力が否定されなかったとしても、労働基準法違反による罰則は適用されます。