労働者の定義【興栄社事件】

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関西医科大学研修医事件 事件の概要

研修医が大学病院で臨床研修プログラムに基づいて、病院の休診日以外は7時30分から22時まで、指導医の指示に従って、採血、点滴、診察の補助、手術の見学、自己研修等をして、研修を受けていました。

病院の休診日も指導医が出勤すれば研修医も出勤して、指導医が当直する日は研修医も副直として病院内で待機していました。

研修期間中、大学病院は研修医に奨学金として月額6万円及び副直手当として副直1回につき1万円を支払っていました。これらの支払いに対して、大学病院は所得税法上の給与等として源泉徴収を行っていました。

その後、研修医が死亡しました。死亡前の2ヶ月のうち休日は4日で、毎日11時間から16時間は病院内で研修を受けたり、関連作業を行ったりしていました。

研修医の遺族が、研修医は労働基準法及び最低賃金法上の労働者に該当すると主張して、最低賃金額に満たない賃金の差額の支払を求めて、大学(病院)を提訴しました。

関西医科大学研修医事件 判決の概要

医師法によって、国家試験に合格した医師は、2年以上大学病院等で臨床研修を受けるよう努めることが定められている。この臨床研修は、医師の資質向上を図ることを目的とするもので、教育的な側面があるが、指導医の指導を受けて、研修医が医療行為等に従事することを予定している。

研修医が医療行為等に従事する場合は、病院のための労務遂行という側面があり、大学病院の指揮監督下で行ったものと認められれば、労働基準法上の労働者に該当すると認められる。

本件について見ると、大学病院の臨床研修のプログラムは、研修医が医療行為等に従事することを予定しており、大学病院が時間及び場所を定めて、指導医の指示に従って、患者に対して医療行為を行っていた。また、大学病院は、研修医に奨学金を支払い、これを給与等に当たるものとして源泉徴収を行っていた。

したがって、研修医は、大学病院の指揮監督下で労務を提供したものとして、労働基準法及び最低賃金法上の労働者に該当するものと認められる。大学病院は、最低賃金額の賃金を支払う義務がある。

解説-労働者の定義

医師法に基づいて、大学病院で臨床研修を受けていた研修医が、労働基準法及び最低賃金法上の労働者に該当するかどうか争われた裁判です。

最低賃金法(第2条)によって、「労働者 労働基準法第9条に規定する労働者をいう。」と規定されています。

もともと、最低賃金については、労働基準法(第28条)で定められていて、「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法の定めるところによる。」と規定されています。

最低賃金法は労働基準法から派生して成立した法律ですので、「労働者」の定義は共通しています。そして、労働基準法(第9条)によって、「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と規定されています。

使用者の指揮監督下で労務を提供している場合は、労働者に該当すると判断されます。

研修として、講習を受講したり、企業に利益が生じない作業をしている場合は、労務を提供しているとは判断されません。労働者に該当しませんので、最低賃金額以上の賃金を支払う必要はありません。

しかし、形式上は研修としていても、企業に利益が生じる作業をさせていると、労務を提供している、労働者に該当すると判断される可能性が高くなります。

生じる利益の程度によって判断が異なるかもしれませんが、この裁判では採血や点滴など、通常と同様の医療行為に従事していましたので、労働者に該当するという結論になりました。