残業手当【静岡県教職員事件】

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静岡県教職員事件 事件の概要

県立学校の教職員が、校長の指示を受けて職員会議に出席していました。

所定の終業時刻が過ぎても、職員会議が終わらないことがあったのですが、時間外労働に対して時間外労働手当(残業手当)は支払われませんでした。

これに対して、教職員が時間外労働手当(残業手当)の支払いを求めて、静岡県を提訴しました。

静岡県教職員事件 判決の概要

職員会議は校長が主宰し、教職員全員で構成され、教職員はやむを得ない支障がない限り、出席するべきとされていた。

職員会議が開かれる日時や場所は、校長の指示により、あらかじめ口頭か黒板に掲示する方法で教職員に伝達されていた。

所定の終業時刻までに審議が終了しないときは、学校によっては、会議を打ち切るか続行するか出席者の意向を聴いて、それに従うことになっていた。

会議を続行する場合、校長はそれを了承していたし、所定の勤務時間の内外によって、審議内容や審議方法など、職員会議の性質やその運営に差異はなかった。

職員会議への出席は教職員の職務であって、職員会議が所定の勤務時間外に及ぶ場合も含めて、校長の指示(職務命令)に基づくものであったと認められる。

労働基準法第37条が、例外的に許容された時間外労働に対して割増賃金の支払を義務付けているのは、それによって、原則的な労働時間制度の維持を図ると共に、過重労働に対する労働者への補償を行うことを目的としている。

静岡県の勤務時間条例は、教職員に時間外労働を命じられるケースを限定しており、それが、労働基準法第37条で保護しようとする労働者の利益を超える公益上の要請に基づくものであれば、無視できない。

しかし、勤務時間条例は、教職員の職務の性質上、時間外労働の管理が困難なことから、原則として時間外労働は命じないこととして、国や他の地方公共団体と教職員の間の均衡待遇、財政への影響を考慮して、そのような制限を設けていると考えられる。

そこには、所定の勤務時間外に、本来の職務を遂行するために勤務した教職員に対する労働基準法による保護を無視してまで、維持しなければならない公益上の要請があるとは言えない。

したがって、教職員が所定の勤務時間外に本来の職務を遂行するために勤務した場合は、校長に時間外労働を命じる権限がなかったとしても、事実上の拘束力がある場合は、時間外労働に対して時間外労働手当を支給しなければならない。

解説−残業手当

県立学校の教職員は、一般職の地方公務員として、一部の例外を除いて労働基準法が適用されます。労働基準法第37条の時間外労働手当(残業手当)の規定も、適用されることになっています。

一方、条例で教職員に時間外労働を命じることができるケースが限定されていて、校長には時間外労働を命じる権限がありませんでした。

校長に時間外労働を命じる権限がない状態で、校長の指示を受けて教職員が時間外労働を行ったときに、時間外労働手当(残業手当)を支払う義務があるかどうか争われた裁判です。

校長に時間外労働を命じる権限がないとしても、命じられた教職員は事実上それを拒否できないため、時間外労働手当(残業手当)を支払う義務があると判断しました。