残業手当の基礎賃金
残業手当の基礎賃金
労働基準法 第37条第5項
第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
労働基準法 施行規則 第21条
法第37条第5項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第1項及び第3項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
【残業手当の基礎賃金】の解説です
次の手当については、残業手当の基礎となる賃金に入れなくても構いません。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 賞与
ややこしそうだ。
残業手当を計算するときに、基本給だけだったら簡単で分かりやすいんですけど、基本給の割合は会社によって違いますので、除外できる手当が限定的に列挙されています。
どういう手当が挙げられているの?
通勤手当や家族手当など、労働とは直接関係がない、個人的な事情に基づいて支払われる手当が除外されています。これらに当てはまらない手当(賃金)は全部、算入して計算しないといけません。
当社は通勤定期代と同じ額を通勤手当として支払っているけど、残業したときに、通勤手当を割増しして支払うのは納得できない。
だからそのような、労働の対価というよりも、福利厚生的に支払われている手当は、残業手当の基礎となる賃金に入れなくっても良いことが認められています。
住宅手当は入れなくってもいいんだよね。前に残業手当の計算に入れるよう言われたんだ。
住宅手当は、ここに挙げられていますけど、これらの手当は名称に関係なく、実態で判断されるんです。
実態で判断?
住宅に要する費用に応じて、住宅手当の支給額を決定している場合は、除外しても構いません。
持家の者に1万円を支給してたけど、これだとダメなの?
はい。一定額で支払っていると除外できません。住宅に要する費用に応じて、支給額を変動させる必要があります。
住宅に要する費用?どうすれば除外できるの?
例えば、家賃月額(ローン月額)5万円〜10万円の者に2万円、家賃月額(ローン月額)10万円以上の者に3万円というような方法だったら、除外できます。
確かに、住宅に要する費用に応じて支給額を変えている。難しいんだね。
家族手当も同じで、扶養家族(子供など)の数に応じて、支給額が変動するものでないと認められません。
了解。
通勤手当も同様に、通勤距離、又は、通勤に要する費用に応じて、支給額を決定している必要があります。
電車の通勤定期代だったら問題ないね。
問題ないです。例えば、全員一律に通勤手当として1万円を支給しているような場合は、「通勤費用を補助するために支払っている」と主張しても認められません。
通勤距離、又は、通勤に要する費用に応じて、支給額に差を付けないといけないんだね。
家族手当、通勤手当、子女教育手当、住宅手当は、それぞれ支給する目的に合わせて支給額を変えないといけません。
「臨時に支払われた賃金」と「賞与」は?
賞与を残業手当の基礎に含めようとすると計算が複雑になります。「臨時に支払われた賃金」は結婚祝金等が該当しますけど、これも個人の事情で支給されるものですし、計算が複雑になります。
この列挙していた7つの手当は、残業手当の基礎に含めても良いんだね。
従業員にとって有利な取り扱いになりますので、全く問題はありません。除外しないといけないという趣旨の規定ではありません。