三菱重工業事件|ストライキ時の家族手当減額は認められるか
三菱重工業事件 事件の概要
従業員がストライキを行ったため、会社はストライキの期間中の賃金を減額しました。
その際、会社は家族手当についても減額をしたのですが、従業員が、家族手当は生活保障的な手当なので、ストライキの期間中であったとしても減額することはできないと主張して、家族手当の支払を求めて会社を提訴しました。
三菱重工業事件 判決の概要
まず、従業員は、家族手当は生活保障部分に該当し、労働の対価としての交換的部分には該当しないので、ストライキの期間中といえども賃金の減額の対象とすることができないと主張する。
しかし、ストライキの期間中の賃金の減額の対象となる手当、減額の対象とならない手当の区別は、労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らして、個別的に判断するものである。
会社では、ストライキがあった場合は就業規則の規定に基づいて、20年以上に渡って家族手当が減額されてきたのであるから、ストライキがあった場合に家族手当を減額することは、労働慣行となっていたと推認できる。
次に従業員は、家族手当の減額は、労働基準法第37条第2項において割増賃金の算定基礎に家族手当を算入しないことを定めている趣旨、及び、労働基準法第24条の規定にも違反すると主張する。
しかし、労働基準法第37条第2項が、家族手当を割増賃金の算定基礎から除外すべきものと定めたのは、家族手当が従業員の個人的事情に基づいて支給される性格の賃金であって、これを割増賃金の基礎となる賃金に算入すると却って不適切な結果を生ずる恐れがあるためである。
労働との直接の結び付きが薄いからといって、ストライキがあった場合に家族手当を減額することを直ちに違法とする趣旨までを含むものではない。
また、労働基準法第24条の賃金の全額払の原則は、ストライキに伴う賃金の減額の当否の判断とは何ら関係がない。
以上により、会社の行った家族手当の減額は違法、無効とは言えない。
三菱重工業事件の解説-賃金の全額支払の原則
この会社では、ストライキがあった場合は、就業規則に基づいて、20年以上、家族手当の減額が行われていました。これにより、家族手当の減額は労働慣行になっていたと判断され、会社の行った家族手当の減額が認められました。
就業規則に家族手当を減額するという規定があり、それに基づいて長年に渡って家族手当を減額してきたという事実が大きなポイントになっています。
この裁判例に基づいて考えると、就業規則(賃金規程)に減額の規定を設けて、かつ、その取扱いが労働慣行として確立している場合は、割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外することが認められている、家族手当や住宅手当、通勤手当も減額できると考えられます。
しかし、従業員の立場で考えると、残業手当を計算するときは除外をして、遅刻や欠勤があったときは減額するという取扱いは、一方的に不利益だけを押し付けられるような感じがして、納得が得られにくいように思います。
家族手当や住宅手当、通勤手当を残業手当の計算の基礎となる賃金に含めないのであれば、遅刻や欠勤があった場合も、これらの手当は減額しないという取扱いが分かりやすくて望ましいと思います。
【関連する裁判例】
- 電電公社小倉電話局事件(賃金の直接支払の原則)
- 福島県教組事件(過払いの調整的相殺)
- 群馬県教職員事件(過払いの調整的相殺)
- 福岡県教職員組合事件(過払いの調整的相殺)
- 関西精機事件(賃金債権と損害賠償債権の相殺)
- 日本勧業経済会事件(賃金債権と損害賠償債権の相殺)
- 日新製鋼事件(合意による相殺)
- シンガー・ソーイング・メシーン事件(賃金債権の放棄)
- 伊予相互金融事件(退職金債権の譲渡)
- 三菱重工業事件(家族手当の減額)
- 明治生命事件(成果給の減額)
- オーチス・エレベータ事件(ストライキによる減額)
- 福岡雙葉学園事件(賃金をさかのぼって減額)
執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。

