休暇の届出時期と許可|就業規則の規定例
休暇の届出時期と許可
- 急に休まれると業務に支障が生じますので、従業員が休暇を取得するときは、3日前までの届出を義務付けるか、3日以内の場合は許可制にしたいのですが、そのように就業規則に記載しても良いでしょうか?
- それぞれの休暇(休業)について、法律で定められている条件を満たしている場合は、従業員に取得する権利が生じますので、3日前までの届出を義務付けたり、許可制にしたりすることはできません。就業規則に記載することもできません。
年次有給休暇
まず、年次有給休暇については、前日までに届け出ていれば、原則的に取得を認めないといけません。3日前までに届け出ていないからという理由で、年次有給休暇の取得を拒否すると、法律違反になります。
就業規則にも、3日前までの届出を義務付ける規定を設けることはできません。ただし、例外的に、事業の正常な運営を妨げる場合に限って、取得日を他の日に変更(時季変更権を行使)することは可能です。
取得日の前日に年次有給休暇の申出が行われると、時間的な余裕がなく、代替要員を確保したり、業務を調整したりすることが難しくなりますので、時季変更権を行使する可能性が高まります。
そのため、当事務所で作成する就業規則では、「特別な理由がない限り、少なくとも3日前までに届け出なければならない」と規定することがあります。特別な理由がある場合は前日でも構わないということで、3日前までの届出を必ずしも義務付けていないことがポイントです。
3日前までに届け出ていれば、代替要員の確保や業務の調整がしやすくなり、時季変更権を行使する可能性が低くなりますので、従業員にとってもメリットがあります。
また、就業規則の診断をしていると、年次有給休暇を取得するときは会社の許可を要すると規定している就業規則を見掛けることがあります。許可制ということは、許可をするケースと許可をしないケースがあることを前提としています。
- 「許可をする=時季変更権を行使しない」
- 「許可をしない=(事業の正常な運営を妨げるため)時季変更権を行使する」
として、許可をしない場合は、請求を取り消すのではなく、取得日を他の日に変更するようにしていれば、就業規則に規定していても違法にはなりません。
しかし、労働基準監督署から指摘を受けたりしたときに、その都度、違法でないことを説明する必要があります。説明が面倒ですし、誤解を招く原因になりますので、就業規則には、許可や承認といった文言は載せない方が良いと思います。
産前産後休業
次に、産前産後休業については、労働基準法の第65条で、次のように規定されています。
- 使用者は、6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
- 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。
いつまでに届け出なければならないという決まりは特にありませんので、この条件を満たしている限り、従業員には産前産後休業を取得する権利があります。したがって、申出が急だからという理由で、休業を拒否することはできません。
就業規則で許可制や承認制にすることを定めて、万一、拒否をすると労働基準法違反になります。会社の許可や承認といった手順は不要で、従業員の届出(請求)だけで処理をしないといけません。そもそも第2項の産後休業は、請求の有無にかかわらず就業させることが禁止されています。
従業員が長期間会社を休む場合は、会社は代替要員を確保したり、業務を調整したりする必要があるかどうかを検討しないといけません。従業員の妊娠を把握したときに、「産休を取る予定はありますか?」と確認をすれば、急に休まれて困るという事態は避けられるはずです。
以下についても、産前産後休業と同じです。法律で定められている要件を満たしている従業員が請求したときは、就業規則の規定の仕方に関係なく、会社は必要な時間(休暇)を与えないといけません。
公民権行使の保障
公民権行使の保障については、労働基準法の第7条で、次のように規定されています。
「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。」
育児時間
育児時間については、労働基準法の第67条で、次のように規定されています。
- 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
- 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。
生理休暇
生理休暇については、労働基準法の第68条で、次のように規定されています。
「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。」
妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置
妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置については、男女雇用機会均等法の第12条で、次のように規定されています。
「事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない。」
育児休業
育児休業と介護休業については、休業の期間が長いことから、育児介護休業法において、申出時期に関する規定が設けられています。
育児休業については、育児休業を開始する1ヶ月前までに会社に申し出ることが定められています。
そのため、例えば、従業員が育児休業を開始する2週間前に申し出たときは、会社は1ヶ月後に育児休業を開始するよう従業員の申出(育児休業の開始日)を変更できることになっています。就業規則(育児休業規程)にも、そのように規定していると思います。
ただし、育児休業は(労働基準法で定められている)産前産後休業から引き続いて取得するケースが一般的ですので、産前産後休業を開始する前に育児休業を取得する予定があるかどうかを確認しておくと良いでしょう。
介護休業
介護休業についても、育児介護休業法により、介護休業を開始する2週間前までに会社に申し出ることが定められています。
そのため、例えば、従業員が介護休業を開始する1週間前に申し出たときは、会社は2週間後に介護休業を開始するよう従業員の申出(介護休業の開始日)を変更できることになっています。就業規則(介護休業規程)にも、そのように規定していると思います。
法定外の休暇
以上は、労働基準法や育児介護休業法等の法律で定められている休暇や休業に関する取扱いですが、慶弔休暇やリフレッシュ休暇、ボランティア休暇など法定外の会社が独自に定めている休暇については、会社が自由にルールを設定できます。
就業規則で、事前の届出と許可を要することを規定していれば、それが有効になります。
また、就業規則で「休暇の手続き」などとして、法定の休暇と法定外の休暇を一緒くたにして、休暇を取得する際は会社の許可を要することを記載している場合があります。
ここまでお伝えしてきましたとおり、法定の休暇と法定外の休暇は位置付けが全く異なりますので、就業規則も完全に分離して規定するべきです。