傷病休暇(法律を上回る制度)の導入|就業規則の規定例

傷病休暇(法律を上回る制度)の導入

  • 就業規則に、従業員が業務外で病気やケガをしたときに、有給で休める傷病休暇の制度を設けようと思っています。注意する点はありますか?
  • 労働基準法等の法律を守った上で、余裕があるのでしたら、設けても良いと思います。

傷病休暇(法律を上回る制度)の導入

従業員が業務外の病気やケガ(私傷病)のため、欠勤したときは、ノーワークノーペイの原則によって、会社は無給で処理をしても構いません。もちろん、従業員が年次有給休暇を取得したときは、有給で処理をすることになります。

依頼を受けて当事務所が就業規則を作成するときに、ご質問の傷病休暇のような法律を上回る制度を設けたいと相談を受けることがあります。従業員は安心して働けますので、そのような考えは素晴らしいと思います。

しかし、割増賃金の支払いや年次有給休暇の付与など、もし、労働基準法等の法律をクリアできていない部分がある場合は、その前に是正するべきです。

就業規則に傷病休暇の制度がなくても問題はありませんが、割増賃金の不払いは労働基準法違反です。法律違反が発覚すると、強制的に是正させられます。そうなると、相応のコストが発生します。

したがって、優先順位で考えると、第一に、労働基準法等の法律をクリアするべきです。就業規則に法律を上回る制度を設ける前に、その費用は法律をクリアするために使った方が賢明です。

また、年次有給休暇の取得率が5割未満の会社であれば、年次有給休暇の取得を促進することで、従業員に喜ばれると思います。

その上で余裕があれば、就業規則に傷病休暇のような法律を上回る制度を設けても良いと思います。

ところで、傷病休暇を導入しようとする場合は、健康保険の傷病手当金も考慮した方が良いです。従業員が私傷病で欠勤をして、賃金が支払われないときは、健康保険から賃金(標準報酬月額)の3分の2が傷病手当金として支給されます。

その場合に、就業規則に傷病休暇の制度を設けて有給で処理をすると、その期間は健康保険の傷病手当金は支給されません。

これまで健康保険の保険料を納付してきて、健康保険を有効に活用したいと考えるのであれば、無給で処理をして傷病手当金を受給した方が良いと思います。

なお、傷病手当金が支給されるのは、連続して3日休んで、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。最初の3日間は有給でも構いません。

また、傷病休暇は設けないで、慶弔見舞金の1つとして、傷病見舞金(一時金)を支給する方法もあります。傷病見舞金を一時金で支給する場合は、賃金とはみなされませんので、健康保険の傷病手当金は受給できます。


執筆者 社会保険労務士 木下貴雄
2002年にキノシタ社会保険労務士事務所を開業し、就業規則を専門として、業務に取り組んできました。現在は、メールによるサービスの提供に特化して、日本全国の中小零細企業のサポートを行っています。

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